*****芹霞Side
時々玲くんは、今にも死んでしまいそうな程に震えることがある。
そんな時、あたしの胸はぎゅっと締め付けられて、何が何でも彼の思い通りにして上げたくなる。
自然な笑顔を引き出したくなる。
あたしに何処までも威力があるか判らないけれど、彼がそこまで未だ"お試し"に執着しているとは意外だったけれど。
だけどあたしだって玲くん好きだし、玲くんと"おでかけ"して、もっと玲くんを知りたいし。
それなら誰に制約されることもなく、"おでかけ"しちゃえばいいんだって思ったの。
そうだよね、誰に遠慮しているんだろう。
きっと櫂を無視した怒りは半端じゃないだろうけど、大根求めて彷徨ったとか、言い訳ならいくらでもあるし。
玲くんはいつだってフェミニスト。
決して車道側にあたしを立たせないし、人混みにぶつかりそうになったらすっと庇ってくれる。
それがあまりに自然過ぎるから、きっと彼という人間は、そう出来ているのだろう。
どこまでも優雅で流麗な佇まいで、優しくて綺麗で。
誰もが玲くんを振り返る。
その玲くんがあたしだけに微笑みかけてくれているのが、女としては誇らしい。
"お試し"でもね。
久々に繋がれた玲くんの手。
やっぱり玲くんは、指を絡め合わせる恋人繋ぎが好きらしい。
更に指先で手の甲を優しくまさぐっていて。
そんな些細なことでも、大切にされていると思えば沸騰もので。
さらに"カレカノ"遊戯という状況を考えてみれば。
端麗な顔をよく見ることが出来なくて、変にもじもじしてしまう。
「あ、やっぱり…大根持っているのが恥ずかしい?」
何をどう勘違いしたのか、片手の大根に苦笑する玲くんに、
「いや違うの、玲くんの隣に"こういう関係"でいるっていうのが…」
すると、くすりという声が聞こえて。
「"こういう関係"ってどういう関係?」
意地悪い声が聞こえてきて。
「え?、だ、だからこういう手の繋ぎ方をするような…」
「どんな関係?」
ああ、くそっ。
玲くん判っていて、何も判っていないというような可愛らしい表情を向けてくる。
玲くん、Sだ。
「ねえ、教えてよ。こういうのは、どういう関係っていうの?」
絶対、Sだ。
「こ、恋人…」
絶対最後には言わせられる。
「ふふふふ。芹霞顔真っ赤。そうか、ちゃんと僕が恋人って意識して貰えてるんだね?」
ふわりと笑ったその顔は。
本当に幸せそうな顔で。
胸がきゅんとなってしまった。
何だ、どうしたあたしの胸は。
どうも今日は、所謂"オトメ"モードに入っているらしい。
まあそれもそれ。
未知なる領域を楽しんでみたいから。
「……。ああ…櫂、警護団動かしたみたいだ」
突然の舌打ちに、玲くんはあたしの手を引っ張って、建物に入った。
「焦っているだろう。そりゃあ…電源切って音信不通。頼みの僕は当事者で。ははは。可愛いから焦らせておこう?」
それも櫂への愛情の1つだろうか。
- 4/10-
[ *前 ] | [ 次# ]
ページ:
【しおりを挟む】
←SS TOP