それから?
俺がソノ気でもさ…"絶交"出ちまえば引き下がるしかねえだろうよ。
俺の頬には赤い手形。
だけど、少しだけほっとしてる。
あれで止まれたことに。
じゃねえと俺、最後まで行ったかも知れねえ。
好きで仕方がねえ芹霞の、心奪うより早く…
最悪な形であいつを拘束しちまったかもしれねえ。
確かに。
身体の繋がりで引き留める手もあるんだろうけれど、俺と芹霞の絆っていうのは、もっと奥深いものなんだ。
表面的なもので、その絆が断たれることの方が怖い。
本当に惚れているから。
やり方間違えて取り返しのつかねえことになって、本当に絶交になんかなったら、俺発狂しちまう。
ああ、どうすればもっとお前を近くに引き寄せられるんだろう。
どうすればこの想いを、もっと伝えられるんだろう。
どうすれば、魅力的な男になれるんだろう。
そう思い悩んでいた時、
「はい」
突然伸びた手と黒い袋。
「?」
顔を上げれば芹霞で、若干怒ってはいるけれど。
「あんたにもイロイロ迷惑かけたし、煌が居てくれて本当によかったと思っているから。御礼」
その袋は、俺が試着した店のもので。
開けて見れば、俺が一番気に入っていた上着で。
「え? え?」
「プレゼント。高いんだから大切に着てね」
やば。泣きそう。
こいつは本当、こういう不意打ちが多いから。
俺は今着ている上着を脱いで、その場で直ぐそれを着た。
「うん、格好いい」
にっこり笑う芹霞に、俺は本当にこいつを好きになってよかったと思った。
此の世でこいつだけが格好いいって言ってくれるのなら、俺はそれだけで満足。
格好良い服に、少しでも似合う俺でいたい。
******
「ああ、いたいた〜!!! お客様、おつり〜!!」
帰り際、あの店員が走ってきた。
「あ、そういえば!!! ごめんなさい」
芹霞が謝りながら釣りを受け取った。
「お似合いですね」
店員は、俺を見て微笑んだ。
「そりゃあ、高いんだから似合って貰わないと」
芹霞がからからとそう言うと、
「いえ…服ではなく、お客様達がです」
「「へ?」」
「美男美女で、凄くお似合いです。
ふふふ、またいらして下さいね〜」
それだけでも凄く嬉しいのに。
「美男は判るけど…美女っていうのは無理あるよな…」
芹霞が、俺を"美男"って言ってくれたこと。
ああもう。
お前が口にするだけで、本当に嬉しくなる。
お前の言葉1つで、俺は空も飛べそうな気がする。
「お前は本当にイイ女だよ。芹霞」
「こ、煌なのに、何故にそんな台詞を、素面で!!?」
俺、もっと男磨くから。
もっともっと俺を見ていてくれ。
魅せられていてくれ。
*********
「ねえ、煌。あたし最近あそこ界隈歩くとさ、ヤバ系の人達から、"ご苦労様です、姐さん"って頭下げられるの」
「……」
「あんたが"俺の女"発言したせいで、あたしまでそっち系だって思われちゃったじないの!!! 大体あんた、あたしの知らない処で、変な処潰してるんじゃないわよ!!!」
Fin.
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