********櫂Side
その店の人気がスイーツだけではなく、より密着出来る空間なのだと玲から聞いた時、いかがわしい場所をよく考えつくものだと鼻でせせら笑ったと思う。
そういう行為をしたいのであればそういう場所に行けばいいのだし、何でスイーツ店なのかその趣旨が判らなくて。
芹霞に強請られれば玲だって行くだろう。
くっそ。
あっちもこっちも…。
連れたのは俺だというのに、入って早々漂う空気に後悔していた。
そういうつもりはなかった。
ただその…ラブラブパフェだとかいうものが人気だと書いてあったから、少しぐらい恋人気分を満喫するのもいいかと思っただけ。
芹霞と共に見てしまった隣のラブシーンには、ほとほと参った。
いやでも煽られ、芹霞を"女"として意識してしまう。
必死に本能を宥めすかし、平静さを取り戻そうと努力していた時に、芹霞の潤んだ目。
更に紅い顔。
いつも期待してしっぺ返しを喰らうから、慎重に観察してみても…やはり、芹霞は俺を意識してる?
そう感じてしまったら。
喜悦と同時に、悪戯心が芽生えてきて。
芹霞が大好きなイチゴの争奪戦を始めた。
これが傍目では、どれだけ卑猥か芹霞は判っていないだろう。
どれだけ俺を煽っているかも判っていないだろう。
イチゴなんてどうでもいい。
取り合うその隙に、わざと絡み合わせる舌。
わざと口内を味わい尽くせればいい。
俺が欲しいのはお前だ。
俺が好きなのはお前だ。
「は…ん…美味し…」
俺の熱を孕み、熱くなっていく果実。
段々と小さくなり行く果実。
無くなってしまっても、甘さだけは残るんだ。
「……ふ…、せ…り…」
俺は甘い物は、苦手だけれど。
芹霞の唇は好きだ。
その甘さを、もっと味わいたくて仕方が無い。
お前の顔を見ていてもよく判る。
吐息も甘い、甘すぎるから。
きっと…。
俺の口の中も甘いんだろ?
お前が好きな味、しているんだろ?
じゃあ…
もっともっと、俺に強請れよ。
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