その優しげな切れ長の目に、あたしの心臓は不覚にも大きく飛び跳ねてしまって。
誤魔化すように、パフェをがっつく。
ただひたすらに。
そして…むせた。
「お前何やってるんだよ、幾ら好きだからってそこまで焦らなくても…」
笑いながらあたしの背中を撫でる櫂に、その感触に。
あたしはとにかく恥ずかしくて。
反対側を向いてスプーンだけを櫂に渡した。
「櫂もどうぞ」
「……芹霞?」
「好きなだけいいよ。あ、だけどそのイチゴは駄目。あたし食べたい」
ああ、何なのよ、あたしの心臓は。
櫂が優しく笑ったから何だって言うのよ。
その時不意に、あたしの唇を指でなぞられて。
ぞくりとして飛び跳ねれば、
「生クリーム、ついてたから」
そしてその指を、艶めかしく舌で舐めとって。
何だか卑猥にも思えるその光景に、思わず魅入ってしまったあたしは、動けなくなった。
「……熱でもあるか?」
櫂が怪訝な顔をして、伸ばされた手があたしの額に触れた時。
「……。まさかとは思うけど…」
その手が、頬に滑り落ちてきて。
「意識、してる?」
その言葉で、更にあたしの顔が沸騰して。
「ち、違!!! 別にあたしは!!!」
しかしそんなあたしを見逃す櫂ではなく。
半べそ状態で遠ざかろうとしたあたしの手をぐいと引き寄せて、そして片手にスプーンにイチゴをのせて、あたしの口に放り込んだ。
何、あたしそこまで欲しそうにしてたの、イチゴ!!?
「噛むなよ?」
そして甘やかに微笑んだ。
「悪いのは、お前だ」
そう妖しげに笑うと、突然顔を斜めに傾けて。
「!!!?」
あたしを座席に押し倒すように…唇を押し付けた。
覆い被さる櫂の熱さにくらくらして。
そして櫂の舌が割り込んできて、あたしの口の中のイチゴが大きく動く。
「んんんっ!!!」
甘酸っぱい果実の味が拡がる。
あたしの口から奪い取られたイチゴ。
こんな状況でも、あたしはその真っ赤なイチゴが食べたくて。
「駄目…返して、イチゴ…」
その時、ふっと櫂が笑ったような気配を感じて、
「強請(ねだ)るなよ、そんな目で…」
そして荒々しく再度唇を奪われ、舌でイチゴが押し戻される。
それと同時に口内を舐め回されて、あたしの口の中はイチゴ味一色になる。
あたしの大好きな味が蔓延して、朦朧とした意識の中でイチゴを食べようとした時、またイチゴを奪われて。
焦れたあたしは櫂と同じように舌でイチゴを追いかけ、イチゴを取り戻そうと奮闘する。
イチゴがあたしと櫂の中を行ったり来たり。
不安定なイチゴの動きが気になって、あたしは櫂から離れられない。
「ほら…もっとくっついてこいよ。落ちるぞ?」
そう吐息交じりの笑い声が聞こえて、あたしは条件反射的に櫂の首に手を回すと、櫂の手もあたしの背中に回って。
あたし達は更に密着した。
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