05-5
 すっきりしてる、頭が。
 置きあがると同時に管理人さんが気づいた。人好きのする笑みを浮かべておはようございますと一言。
「おはようございます。あの、ありがとうございました。もう大丈夫なので……」
「朝食、召し上がっていかれますか? 食べやすいものをご用意しましょう。大事をとって今日はお休みください」
 部屋に帰る、という前にさえぎられてしまった。
 けど、いう事は聞いておいたほうがいいかと俺は頷く。
 管理人さんはこちらにと、俺を奥の部屋へ。確かにベッドで食べるのはちょっとなと思っていたし、立ち上れる。回復はしてるみたいだ。
 通された先、俺は驚く。
 そこにトーゴがいる。畳に小さなテーブル。そこで先にもりもりと朝ごはんを食べていた。ごくんと一口飲み込んで俺に笑む。
「おはよ」
「お、はようございます」
 会うたびにおはようって、言ってる気がする。
 管理人さんに背を押され俺は目の前へ座った。なんでいるのという顔をしていたのだろう。
 管理人さんが心配して離れようとしなかったのだという。臣と共に追い返してからこっそりやってきて、カウンター外に座り込んでいたから招いたのだと。
 心配。
 心配なの、それは。
「どうぞ」
「ありがとうございます。あの、朝ごはんもですけど、一晩ありがとうございました」
「いいえ、生徒の皆さんの手助けをするのが私の仕事ですので」
 大人だ。余裕がみてとれる。
 素直に感謝して、目の前のおかゆに手を伸ばす。たまご、ふわふわだ。
 もう食べ終わったトーゴは俺をじっとみている。正直食べにくい。
「悪い」
「え?」
「送る?」
 それだけいって、トーゴは俺の額にぺたりと手を当てた。
「まだ顔色が悪い。部屋まで送ろうかとおっしゃってるのかと」
 管理人さんが言う。たぶん、それであっているんだと思った。
 というか、なんでわかるんだ。
 そんな表情に長年ここに勤めていますからと管理人さんは笑んだ。
 俺がトーゴをまだよく知らないから、こうなってるってこと?
 トーゴをもっと、知りたい。
「送っていただけばよいと思いますよ。昨日よりは顔色も良いですが」
 やはり心配ですと。
 素直に俺は頷いた。もう少し、トーゴと一緒にいられるならそれがいい。
 朝ごはんはそれから無言だった。食べ終わればトーゴが立ち上る。
 俺もそれについて立ち上った。
 管理人さんに見送ってもらい、俺は部屋へ戻る。
 のろのろと、ゆっくりの足取りに気づいてトーゴはそれに合わせてくれた。


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