04-7
 風呂から上がって髪を乾かして俺は臣に帰ると伝えた。
「どうせ帰って寝るだけなんだろ。ここで寝ていけばいい」
「臣の匂いばっかで落ち着かない」
「んなわけねぇだろ。お前と俺の匂いは同じだ」
 俺の傍にいるんだからな、と臣は言う。こいつ、本当にやばい域にそろそろ達するんじゃないかと思える。
 けれど、確かに。
 臣の用意したもの、臣の傍。アイツの匂いと同じであってもそれはおかしくないかもしれない。
「ちなみに俺の寝台はお前の使ってるのよりも、格段に上等のやつだ」
「うっ……」
 誘惑を、また。そういわれると気になる。
 寝室はそっちだと示された。臣は書類に集中している。
 俺は帰るのを止めたといってその部屋へ向かう。これも臣に可能性を残す行動なんだろうなと思いつつ、誘惑に負ける弱さに内心舌打ち。
 言ったとおり寝心地良さそうなベッドだった。
 のそのそとその中にもぐりこんで隅っこで円くなる。真ん中は何となく落ち着かないから端だ。
 いい夢が見られるだろうか、どうだろうか。寝心地良すぎて逆に夢なんて見ない気もするけれども。
 そのまま瞳閉じて、俺はまどろんだ。
 ふわふわする心地。とても良い。意識は沈んだり浮いたり様々だ。
 その中で、何か隣にあったかいものがあるのを感じた。優しい感じになんとなく擦り寄った。
 そしてこれは臣だと、知る。
 今日は優しい。だから俺も隣に居られると思う。
「せっき」
「んー……?」
「なんでもねぇよ」
 呼ばれて生返事。それに一言。なら呼ぶな。
 そう思って、深く深く沈んだ。
 優しい臣はウソだろうか、ホントだろうか。
 それともあの苛烈な視線を向けてくる臣がホントの臣なのか。
 よくわからない。
 臣のはく言葉は真意だろうか、それとも別のものだろうか。よくわからない。
 そもそも、俺は臣のつむぐ言葉が信じきれていないのかもしれない。
 ウソもホントも、どちらも。
 どちらだっていい。
 どっちでも俺には代わらないような気がするから。


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