臣がそろそろ時間だと生徒会室を出る。俺もそれについていくだけだ。
教室にはいれば挨拶と共に好奇の目。
そんな視線を受け流す。
朝のSHRでは名前だけ、自己紹介してそれで終わり。
後は適当に過ごす。臣が横に居て何かといってくるから他の人はだれも声をかけてこない。
いつも通りだ。
臣はある意味、俺と世界を切り離すものでもあると思う。
「臣はー……俺といて楽しい? 幸せ?」
「なんだ、いきなり」
昼食をとりながら、そんなことを聞いてみた。
食堂のテラスは特別席らしい。そこに俺が入るのはルール違反、ぽかったんだが。俺がごねて、ここじゃない場所で食べる事もきっとできただろう。
でも臣にいいからと連れていかれた。
視線が心地悪い。
臣と一緒にほかの場所で食って視線をうけるよりかはこっちの方がましだった。ここではそういう視線はない。
「俺の事を傍に置きたい、とか。離れるなとか、好きとかいうけども」
「愛してる、もいってるだろ」
……鳥肌たった。
なんだこれ、こうやって面と向かって昼間から言われると狂気じみてるとしか思えない。
「やっぱりいい。なんかもう、いやな気分になる応えしかなさそうだから」
「は、いくらでもささやいてやるぜ」
この余裕。
臣のほうが俺よりも幾分も先にいってるとは思う。
俺は何をしても勝てないだろう。そもそも勝つつもりもないのだけれども。
「まぁ、いいか……あ、うまい」
考えるのも面倒になっているところに一口。食べた煮物がおいしくて俺の思考はもうそっちに飛んだ。
さすが金持ち校。料理もいいもん出してる。久々においしい、と思った。
常々ジャンクフードとか、レトルトとか。そういうものばっかり食ってた俺にとってここの食堂は味覚修正の場所になる気がした。
臣との一日が終わる。
一日目だから、と俺に付き添うように……違うな。
俺を連れ歩いているのか。王様はどこでも王様だ。
ただ、ここの奴らに暴君たる一面をみせてるのか、それともみせてないのか。
みせてないか、と思う。
俺がいてもこいつに声をかけてくる人はいた。仕事とか、ただのあいさつとか。
それに律儀にこたえてるし。
どちらかというと、ここでは穏やかなようだ。
「来いよ」
「へ?」
「俺の部屋」
「あー……やだ」
「来い」
拒否はした。けど有無を言わせない強さ。
そしてそれを、寮のエントランス。人目の多い場所でいう臣。
最悪だ。二度目の来い、はもう命令だ。
「着替えてから……とか、ダメか」
「ダメだな。このまま来い」
深いため息が漏れた。俺は仕方ないと後をついていく。
ついていこうとしたのに臣が引き寄せた。
ああ、もうまたか。
腰をつかんで支えるような。昨日は肩だったのに、な。何に対して牽制しようとしてそうしているのか全く分からない。
「放してよ」
「断る」
もう何を言っても無駄か。
臣はスイッチが入ってる、俺を独占したいってスイッチ。
昨日はまだ入ってなかったんだけど、な。
そばに置いて、周囲にみせるのが楽しかったのだろうか。それが気に入った?
いや、違う。
何か別にある気がする。
「別に何もしねぇよ」
「え?」
「お前は俺の部屋で寝てたらいいんだよ」
難しい顔をして何か考えていただろうか。
唐突にそんなこと言われて、エレベーターに押し込まれた。その腕の中に閉じ込めるように向き合ってきた。
「怒らないから正直に言えよ」
「なに?」
「朝の続きだ。お前、どこに……いや、誰にかくまわれてた?」
またか、しつこい。
答えるまで諦めない、って顔をしてる。