彼がいない
 目の前から彼がきえて、僕の世界は一度、止まった。
 彼がいないと、どうにもならない。
 言われるままに命をこなして。けれど一緒にいた彼がいないから何も、思わない。
『俺はいくから。元気で』
 その最後の言葉だけがいつまでもどこまでも、僕の中で繰り返される。
 夢の中でもだ。
 その光景でもいい。彼の姿を見ることができるのなら僕にとっては最高の夢だ。
 別れを繰り返すことになっても。
 その幸せをかき消す声が聞こえる。僕はうっすらと目を開けた。
「ツヴァイ、起きろ。ツヴァイ」
「ん……ドライ……」
「よろこべ、お前に仕事だ」
 お前が待ち望んでいた仕事だとドライは言う。
 仕事なんてどうでもいいという僕に、ドライは笑いかける。
 ひどくやさしくてゆがんだ笑み。
 僕の頬をドライの手が撫でる。
「ヌルの居場所がわかった」
 お前がいって、殺してこい。
 ドライは僕に囁いて、歓喜を紡ごうとした唇をふさいだ。



殺し屋組織的な。
ヌル←ツヴァイ←ドライ


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