「で、消えてた間はどこにいた」
「何でそんなに知りたいの?」
「お前のこと、だからな」
何だって知りたいと言う。こわい。
これは、ずっと聞かれそうな気がする。
俺はひとつため息ついて、その手を払った。じっと臣の目は俺を視ている。
「匿ってくれたやさしー人がいただけだよ」
「誰だ」
「さすがにそれは、内緒にしておくけど……別に何もないよ」
行き倒れ見たいになっていた俺を、拾ってくれただけ。
元気になったら追い出された。
ということに、した。本当は自分で出てきた、だけど。
本当かと何度も聞いてくる。けれど終いにはそれを臣は納得がまだいかないようだけれども受け入れた。
「じゃあ、今度は俺の番」
「は?」
「俺の同室の人って、何?」
本当は知ってるけど。
敵対してるチームの頭って知ってるけど。
「名前は聞いたけど」
「名前を聞いた?」
最低限の礼儀だろという。俺が名前を聞く。それが臣にとっては以外だった様で片眉吊り上げて睨んでくる。
コワイコワイ。
「今までそんな事したことないだろ。興味でも湧いたか? チームのやつらの名前なんて一人も聞いたことないし、覚えてないだろ」
「いや、俺だって名前くらいは聞く。臣のチームのやつらに聞かないのは必要ないからだし……」
あいつ等は勝手に名乗る。そして俺は覚える気はない。数が多いからだ。面倒すぎる。
「……敵対してる所の頭だ。関わるなよ」
「進んで関わろうとは、思わないかなぁ……」
「あれのチームのやつ等とは校内ではやりあわないことにはなってる。けどな、ひとりだけそうじゃないのがいる。お前に何かするとは思わねーけど」
みたら逃げるか、無視しろ。
臣は言いながら俺を引き起こした。正直、さっきまでの態勢きつかったから助かる。
俺ははいはい、と生返事落としながら背中をさすった。地味に、痛い。
「俺をみたら殴りかかってくるやつだから、きたら離れろよ」
そう言って、臣はその相手の名を紡ぐ。
トウゴ、と。
その名前に、俺は気のないふりをして、心の底で笑った。
トウゴ、トーゴ。
俺の好きな人。どうして臣に、シンキに執着するんだろう。
どうしてそれを、俺に向けてくれなかったのだろう。
いや、そのカケラはあったのかもしれないけど潰したのは俺自身だ。しかも、今朝潰したばかり。
だからもう一度、それをつなぎ直す。
どんな形であってもいいから。