「何か隠してるだろ、刹生」
「うん?」
「そうじゃないと、お前が俺と一緒のところにいくなんてないだろうからな」
ああ、鋭い。
いずれはばれる、かなぁとは思ってはいるけどもまだ少し、早い。
少しどころか、早すぎる。
「消えてた間、何してた。どこにいた」
それを今、聞くか。
俺が戻ってから、一度問うてからそれには触れてなかった。
俺が口を割らないと思ったからだろう。でもまた、聞いてきた。
臣は俺がここにきたのと消えていた期間とが関係あると思っているわけだ。
「それを言って、どうにかなるの?」
「別にどうにもしねぇけど」
「ウソ。嫉妬するくせに」
そう言って煽ると、わかってるじゃないかと臣は言う。
お互い、相手の性格はよくわかっている。そのつもりだ。
「いい加減、諦めて俺のものになっとけよ」
「えぇ?」
「別に、どっかに閉じ込めて監禁するとは言ってない。別に好きにしてていい。けどなぁ……」
「っ!」
乱暴に引き倒された。それも臣の方に向かって。
臣の膝には俺の背中。頭は、落ちるような感じで少し苦しい。
俺の視界を臣の手が塞ぐ。
「あんまり好き勝手するなら、俺もお前を好きにするぜ?」
「いつもしてる」
「してねぇよ、まだ」
視界を塞ぐ。
それは臣は俺から全部とってしまいたいのかと俺に思わせる。
俺の全部、臣に与えることなんてもちろんできないし、したくはない。
「臣……」
「あ?」
「俺は、臣のものにならないっていつも言ってる」
「心の底から言ってるようには思えねぇよ」
心の底、って。
なんで、と俺は思う。どうしてだ。
「どうしてだ、って感じだな」
それさえも見透かされている。俺は臣、と小さく名前を呼ぶ。
咎めるような、そんな心持ちで。
「お前、本気で俺から逃げねぇし。嫌ならもっと徹底的にやれよ」
そうゆう事ができるだろ、と臣は言う。
「抗ってみろよ」
俺はそれに答えることが、できなかった。
確かに、言われたとおり、抗った事はないかもしれない。
「この前逃げた時は、さすがにとうとうやられたかと思ったけど……戻ってきたし、な」
「……そうだね」
でもそれはお前のために戻ってきたわけではないから。
俺は俺のために、お前のとこに戻った。