うとうとして、ちょっと前のことを思い出した。トーゴに拾ってもらって、コウのところにいた時のこと。
そして少し、意識がはっきりしてきた。
やばい、準備しないと。
先に貰っていた制服に袖を通す。時間をみれば七時半。なんだ、いつもおきる時間だ。
鞄に中身は、つめなくていいか。
身軽なまま、部屋を出る。
「おはよ」
「っ! はよ……」
部屋から一歩出ると同時に声がかかった。そこにいたのは臣だ。
タイミングがいい、とかじゃない。
わかっていて、やっているんだ。
「待ち伏せ?」
「いつも七時半に起きるだろ」
だからこの時間だと思った、と臣は笑う。俺の行動全て、知ってるとでも言うように。
「一緒にいろっつっただろ」
「いったかなぁ」
俺は曖昧に笑う。
そうやってはぐらかすのも今のうちとでも言うのか。
臣はこいと示す。
「朝飯」
「お腹すいてない」
「なら場所だけ案内する」
そう言って寮の一階、奥に食堂があると教えてもらった。購買のような、コンビニもそこにあるという。
便利だな、ここは。
寮から外にでれば、次は校舎だ。土足でそのまま、そして職員室に案内してくれた。
「ありがと、もういいよ」
「そうはいくか。同じクラスだって言っただろ」
ああ、そうだった。
そういえば同じクラスで、隣の席だっけ?
臣と机並べるのは、小学校以来だったかなぁとふと思い出す。でも途中で臣は転校していった。
転校先はここの初等部だろう。
職員室で担任と会う。
俺は一つ二つ、返事を返すだけだ。派手な格好した先生だなぁと思ったけどさして興味は湧かない。
「……おい、こいつ大丈夫か?」
「いつもこうなんで」
「そうか……丙がいるなら……とりあえず大丈夫か」
先生は任せた、と臣に言う。何をだ。
挨拶を適当に、まだ早い時間だから臣が構内を案内してくれるという。
正直、興味ない。
でも臣はそう思ってるのを知って、俺をどこかに連れて行く。
エレベーターに乗せられて、上階に。
「屋上?」
「違う、生徒会室だ」
は?
なんでそんなとこに、と思ったけども。
そうか、ここは臣のテリトリー。誰も邪魔しない場所って、ことか。
嫌な予感しか、しない。
少し、他より豪奢な扉の先、そこはどこかの執務室のようだ。
窓は一面鏡張り。
一番奥の、一番でかい机がきっと臣の机だろう。
「座れ」
示されたのはふかふかのソファ。
ヤバイ、あれは心地良さそうだ。気持ちよく眠れそう。
立ちっぱなしも、と思って座るとその隣に臣も座る。
いつも通りだ。
「目が赤い」
「え? あー……うつぶせで寝てた」
「ウソだな。お前はいつも丸くなって寝る」
「じゃあ掃除して、埃被って目を擦った」
そんなの見苦しいイイワケとでも言うように臣は笑った。