04.ウソもホントも、どちらも
 うとうとして、ちょっと前のことを思い出した。トーゴに拾ってもらって、コウのところにいた時のこと。
 そして少し、意識がはっきりしてきた。
 やばい、準備しないと。
 先に貰っていた制服に袖を通す。時間をみれば七時半。なんだ、いつもおきる時間だ。
 鞄に中身は、つめなくていいか。
 身軽なまま、部屋を出る。
「おはよ」
「っ! はよ……」
 部屋から一歩出ると同時に声がかかった。そこにいたのは臣だ。
 タイミングがいい、とかじゃない。
 わかっていて、やっているんだ。
「待ち伏せ?」
「いつも七時半に起きるだろ」
 だからこの時間だと思った、と臣は笑う。俺の行動全て、知ってるとでも言うように。
「一緒にいろっつっただろ」
「いったかなぁ」
 俺は曖昧に笑う。
 そうやってはぐらかすのも今のうちとでも言うのか。
 臣はこいと示す。
「朝飯」
「お腹すいてない」
「なら場所だけ案内する」
 そう言って寮の一階、奥に食堂があると教えてもらった。購買のような、コンビニもそこにあるという。
 便利だな、ここは。
 寮から外にでれば、次は校舎だ。土足でそのまま、そして職員室に案内してくれた。
「ありがと、もういいよ」
「そうはいくか。同じクラスだって言っただろ」
 ああ、そうだった。
 そういえば同じクラスで、隣の席だっけ?
 臣と机並べるのは、小学校以来だったかなぁとふと思い出す。でも途中で臣は転校していった。
 転校先はここの初等部だろう。
 職員室で担任と会う。
 俺は一つ二つ、返事を返すだけだ。派手な格好した先生だなぁと思ったけどさして興味は湧かない。
「……おい、こいつ大丈夫か?」
「いつもこうなんで」
「そうか……丙がいるなら……とりあえず大丈夫か」
 先生は任せた、と臣に言う。何をだ。
 挨拶を適当に、まだ早い時間だから臣が構内を案内してくれるという。
 正直、興味ない。
 でも臣はそう思ってるのを知って、俺をどこかに連れて行く。
 エレベーターに乗せられて、上階に。
「屋上?」
「違う、生徒会室だ」
 は?
 なんでそんなとこに、と思ったけども。
 そうか、ここは臣のテリトリー。誰も邪魔しない場所って、ことか。
 嫌な予感しか、しない。
 少し、他より豪奢な扉の先、そこはどこかの執務室のようだ。
 窓は一面鏡張り。
 一番奥の、一番でかい机がきっと臣の机だろう。
「座れ」
 示されたのはふかふかのソファ。
 ヤバイ、あれは心地良さそうだ。気持ちよく眠れそう。
 立ちっぱなしも、と思って座るとその隣に臣も座る。
 いつも通りだ。
「目が赤い」
「え? あー……うつぶせで寝てた」
「ウソだな。お前はいつも丸くなって寝る」
「じゃあ掃除して、埃被って目を擦った」
 そんなの見苦しいイイワケとでも言うように臣は笑った。


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