03-6
「何、そのちょんまげ」
「前髪、邪魔だったから」
「ピンとかあるけど」
 これでいい、と俺は返す。
 遊びに来たコウは俺をみてまず笑った。そしてどうしたのかと聞いてくる。
 なんとなく、彼にされたのだとは言いたくなかった。
「かわいいかわいい」
「かわいくねーし」
 そして、俺はこいつと話すたびに口が悪くなっていった。多少、丁寧な言葉遣いで接していたけどいらないと思い始めたから。
「かわいいです」
「かわいいって言われても嬉しくねーし」
 逆に、コウは時々丁寧になったりする。なんでかは知らない。けど、それが普通っぽい。
 人にはそれぞれあるだろうから、それが普通なんだと思って理由はきかない。
「さーて、今日は君にいいこと教えちゃおうか」
「何?」
「シンキが人探しをやめた」
「!」
 やめた? あいつが、俺を探すのを?
 それが本当なのか確かめる余地がない。けど、ウソをつく意味もコウにはない。
「やめてないかもしれないけど。おおっぴらにはやってない、って感じかもね」
「そう考えるのが妥当だと思う」
「……なぁ、ちょっと知恵かしてくれる? 宿代変わり」
 そう言って、コウは悪い笑みを浮かべた。
 特に、何も考えず俺は一つ頷いた。
 そうすると、ホワイトボードをひとつコウは持ってきた。そして寝台の上にばふっとおく。
「これ、陣地でこれ建物」
 ボードに大まかな地形を描いてゆく。それは俺も知ってる場所で、あそこのあたりかと聞けばそうだと返る。
「……喧嘩?」
「ああ、今晩。どう布陣すれば勝てると思う?」
「……なんで俺に聞く?」
 そりゃもちろん、とコウは言う。
 敵の手を一番知ってるやつだからと。
 相手はシンキのチームって、ことか。
「未練ないなら潰してやるけど?」
「そんなに簡単じゃないと思うけど」
「だよなぁ」
 その自信はどこからだ。でも、楽しそうにコウは笑っている。
 別に、俺に本当に潰し方を相談しているわけではない。面白がっているだけだと思う。
「……シンキは、正面からぶち当たるのがすき。だから、正面からいくとはしゃいででていく」
 そんな事は解りきった事だろう。いつもそう、だから。
「でも、実は後ろから来てほしいんだよ、あいつ」
 それくらいのハンデがほしいと常々思ってるはずだ。
 後ろからってのは、卑怯といえば卑怯。けど、それくらいのほうがあいつは楽しいのだと、思う。
「あれの本質は暴君だから」
「で?」
「いつかきっと、誰かが後ろからぐっさりくるだろう。だから警戒してないようで、実はしてる」
 これは弱みといえば弱み。
 それを敵、といえる相手に流す。俺は何を、しているんだろうか。
 いや、でも。
 でも。
「でも、きっとそんなのも捻じ伏せるだろうから」
 そう、捻じ伏せる。臣ならば。
「どこからかかっていっても同じ」
 それが長年近くにいた臣の印象みたいなものだ。幼馴染。
 その域をでやしない。友達でもなんでもない。幼馴染だ。
 それは俺にとって深い絆、ではない。


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