03-5
 しばらくコウと話して状況をもう少し掴んだ。
 体ががちがちに固まって痛い俺は動けないからしばらくここで厄介になることにした。
 別に迷惑ではないから、と言ってくれているしそれに甘える。
 この場所はコウのチームの本拠地みたいな場所だから臣の手が伸びる事はない。
 一日たてば体の痛みは引いてきた。体も綺麗にして、久しぶりに鏡をみた。
 ぼさぼさの頭。のびっぱなしだ。切りたくても臣がそうさせてくれなかった。
「前髪、邪魔だなぁ……」
 目を隠すそれを俺は掻き分けた。ああ、こんな顔してたなぁと思う。身奇麗にして、また最初に寝てた場所に戻る。そこでずっと寝てる。
 それが俺の毎日だ。日付の感覚なんてもうとうに麻痺している。
 うとうと。
 時折、まどろんでいる時に誰かが傍に居た。
 ひやり、と冷たい手が額を頬を撫でてゆく。これはきっとあの水色の瞳の人だと思った。
 やさしい手だなぁ、と。
 少し心があったかくなるような、そんな感覚。それは久方ぶりのものだった。
 そして珍しく、俺はその日素早く覚醒できた。
 撫でる手を捕まえる事ができた。
「待って、いかないで……」
 離れかけた手を捕まえて、俺は顔をあげる。
 少しびっくりしたような顔と行き会った。綺麗な、顔。
 綺麗な色の瞳。
 片膝たてて、寝台に座って俺の様子窺うようにしていた彼。
 捕まえた手を離して自分の髪を掻き分けて、その人と真っ直ぐ視線合わせた。
「あの、ありがとう」
 とにかく礼が言いたかった。見つけてくれたから、引き摺ってきてくれたから俺は今逃げられてるのだから。
 伝えれば、彼は綺麗に笑って、そして俺の頭をわしゃりと撫でた。
「……髪」
「髪?」
 繰り返せば、彼はごそごそと自分の服のポケットをあさる。そして見つけたというようにゴム一つ。
 それで俺の前髪を纏めた。いわゆるちょんまげ。
 そうして、満足したらしい。一つ頷いて、そして彼はどこかへいってしまった。
「……意味わかんない」
 でも、なんとなくそのゴムを外そうとは思わなかった。
 いつもの俺なら外してる。外してるはずだ。けどそうできなかった。


prev next


top

main

bkm
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -