03-3
 目の前の男は俺がどうしてここにいるかを教えてくれた。
 それは俺が状況を飲み込めていなかったからだろう。
 俺はこの男の幼馴染にひきずられてここにきたらしい。その時、服はぼろぼろでぐちゃぐちゃだったらしい。
 それは俺がここまで、ずっと引きずられてきたからだろうと男は言う。
 それについてはすまないと謝られた。痣もいくつかできていると言われる。
 少し驚いた。
 引きずられても気づかないほど俺は疲れていたのか。まったくそんな、覚えがない。
「で……お前がぐちゃぐちゃで汚くて怪我してるのは、引きずってきたあいつのせいではあるから、一応手当はして身なりは整えた」
 けども、においだけはどうにもならなかったから風呂に入れと言われる。
 ああ、確かに何か臭う。生ごみ臭だ。
「シンキの連れてるやつだからなぁ……正直扱いに困る。立ち上れるなら出ていけ」
 出てけ、と。
 ぞっとした。それはちょっと、勘弁してほしい。
「あ……どんな感じ、か……わかる?」
「あ?」
「その、シンキが何、してるか」
「……暴れまわってたな、イライラしてる」
 今、捕まるとまずいことになるのは簡単に想像できた。
 さっと背筋が凍るような感覚。
 だめだ。今、俺の心は疲弊している。この状態で、あいつと会うのは危険だと思う。
 耐えられない、そして自分を守れない。
「……わけありってことか?」
 真っ青だ、と男は言う。俺の様子がおかしくなったことは目に見えて明らかだった。
 そしてまたため息をついた。
「……話してみろよ、ほら」
「え?」
「話せよ」
 何度も言わせるな、というように彼は言った。
 話して何になるのだろうか、と思う。今までの態度を見る限り、この人はシンキとは仲良くはない。
 仲良ければ、俺もきっと一度くらいは顔を見たことがあるはず。
 おそらく敵対しているのだろう。
「話せば、今すぐ放りださないでいてやるから」
 足元をみられた。
 なんだか、そんな風に思う一言だった。
 けれど、ずっと黙っているわけにはいかない。
「逃げて、きた。ただそれだけ……」
「シンキから?」
「……そういうことになる、かな」
「ということは、あいつがお前を殴り倒して無理やりつれてきた、とかじゃ……ないんだな」
 その言葉にふるりと、俺は首をふった。
 それに、彼は安心したのだろう。
 態勢崩しながら長い息を吐いていた。


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