目が覚めると、ただただ暖かかった。
お、死んで天国かとも思ったけど、そうじゃないのは解った。だって俺がいくなら、地獄だ。
ひたり。
ぼーっとする頭、その額が冷たい。なんだろう、と思って少しだけ意識を浮上させる。
それは手だった。冷たくて気持ちいい。
喉の奥が引き連れたみたいで声はあんまりでない。変な、感じがする。
それでやっと喉が渇いているという事を認識した。
少しだけ、瞳を開く。
その先に綺麗な水色の瞳がある。何を映してるのかは、よくわからない。
よくわからなくて、俺はまた瞳を閉じた。臣以外の誰かだっていうのがわかっただけでいい。
それに少し安心して、また眠ったのだと思う。
俺があの人をみた一番最初だ。
そして次に目が覚めたときには、もうあの人の姿は無かった。
変わりに、妙に不機嫌な男がいた。
のそりと起き上がれば、そいつが俺に気づいて視線を向けてくる。
「起きた? 水、いる?」
その言葉にひとつ頷いた。
投げてよこされたペットボトル。
けど、その蓋開ける力も今無かった。困った。
そんな風に思っていると、男がさっき投げてよこしたペットボトルを俺の手からとって蓋をあけてくれた。
「あ、りがと……」
水を一口含む。乾いていた、という感覚が一気に駆け抜けた。
すごくおいしい。
そして少し、周囲をみる余裕ができた。
どっかの廃倉庫、だろう。プレハブ小屋みたいな感じだった。
でも、俺が居る場所は絨毯やらしいてありソファや色んなものが置いてある。俺はその一角に、簡易のベッド作っておいて貰っているようだ。
「で、君は?」
「あ……」
値踏みするような視線。この人は違う。最初にみた人じゃない。
「……シンキが探してるのは、君だよね」
「シン、キ?」
「ごまかすなよ。時々、隣にいるだろ」
臣のこと、かな。確かに、時々連れ歩かれていることは事実だ。でも俺はついていきたくて、一緒にいるわけではないし。
どう答えようかと逡巡している間にちっと舌打ち一つ。そして彼はため息をついた。
「得体のしれないもの持って帰って来たな、あいつ」
あいつ。
その言葉は俺の何か奮わせた。それは、あの水色の瞳の人だろうか。
きれいな色をしていたと、思う。