01-5
「……お前には誰かつけるからな」
「うん?」
「チームの誰かを、俺がいないときには常につける」
「いらないよぉ」
 そう言うから、いるんだ、必要なんだと幼馴染は遮った。
「お前が思ってるほど、このハコん中は甘くねぇんだよ。黙っていう事きいてろ」
「はーいはい」
 過保護だ。とても過保護。
 今までより少し弛んだかなぁと思ったけど、そんな事はなかったみたいだ。
 息がちょっと、つまる。
 つまりはじめる。ゆるく、首を絞められていくような、呼吸の阻害。
「あ、あれが学校? すごいねー、でっかいなー」
 ああ、またここでもかと思いながら顔を上げれば遠くに白い建物が見えた。
 これ以上この話を続けるのはよくない。話題の転換だ。
 あれはきっと校舎だろう。
 門から結構歩いたな、と今更ながらに思う。木々の生茂る静かな道だった。人の気配なんかない。
 かくれんぼするにはもってこいだと思った。
 この中で、幼馴染を撒いてしまえばいい。けど、今日はしない。
 この学校の作りを俺はまだ知らないからだ。
「あの校舎の向こうが寮だ」
「あー、うん」
 あれ、お前の部屋は俺と一緒だって言ってこないな。流石にそこまでいかなかったのかな。
 二人部屋だってパンフにあったからそうなるかと思ってたんだけど。
「職員に挨拶に行くのは明日でいいだろ。寮に連れてってやる」
 うん。
 部屋について何もいってこないってことは、別だろう。
 きっと同室の人に、これから圧力かける気なんだろうな。
 やだなぁ。いつものことだけど、そういうところは嫌いだ。
 幼馴染の後をついて、寮に入る。するとすぐ視線が向けられた。
 ざわざわ。
 こういう視線を向けられるのはあまり好きじゃない。好奇の目、っていうのは。
 けど、それがやんだ。
 幼馴染がくるりと視線一巡りしただけで、ほとんどがこっちを見るのを止めた。
 けど、一部の視線はこっちにむいたままだ。
「あ」
「やっほー」
 エントランス、その端のふかふかのここちよさそなソファに座っている知った顔。
 ああ、こいつもここだったのかとため息一つ落ちた。
 多分、幼馴染が居ない時のお目付けはこいつだろう。なんだ、外と変わらないじゃないか。
 難易度が上がる。
 長く一緒にいた分、お互いの手のうちは知れているからだ。だから出し抜きやすく、出し抜きにくい。
 何がどう転ぶかわからないと、俺は思う。


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