幼馴染に案内されながら学校がどうなっているのかを色々と教えてもらった。
正直どうでもいい、と思っているのを幼馴染は見透かしている。
ぐい、と腕とって俺を近くへ引き寄せる。
「おい、どうでもいいと思ってるだろうけどな、これは覚えておけよ」
「え、あー、うん。何?」
「一人にはならないってことだ」
何言ってんだ、一人にさせない筆頭のくせに。
俺が、お前の前から消えることができたのもちょっと運が良かったからだったのに。
それくらいにガチガチに固めてくるくせに。
「……お前がいつも隣にいるつもりのくせに」
「そうだけどな、そのつもりだけどな」
幼馴染は、そうしたくはないけど絶対一人にしてしまうだろうからという。
なんだそれは、俺にとっては好都合だ。幼馴染が傍にいたら、彼を探せない。
「受けたからには俺はこの学校を仕切んなきゃなんねーし、その仕事を放置はできねーから。それをやってる間はお前が一人になる」
「仕事? ああ、そういうのは律儀だっけ」
「真面目な話、一人になるのはまずいんだよ。はけ口のないやつらがいるから、お前は格好のエモノだ」
「お前が、俺のもんだっていっても?」
「いう事聞かないやつらはいる。俺以外でいいから、誰かと一緒にいろ」
めんどうくさい。
別にひとりならひとりで、そういうのに会わないようにすることくらいはできる。
けど、俺以外でいいからなんて、珍しい。
変なものでも食ったのか、こいつ。
「珍しがってるな」
「うん、まぁ……あんだけ、囲ってたお前が、だし」
「距離あっただろーが」
「距離?」
お前はあっちで、俺は此処。幼馴染はそう言った。
距離があるということは手が届かないという事のほうが多くて。
それなら、一緒に居る時に威圧して、固めてしまえば誰も手がだせなくなるだろうとなんでもないことのように言う。
まぁ、確かにそれは否定しない。今までそう、だったから。
「このハコん中にいるのなら、いくらでも俺はお前に手ェ伸ばせる。だから、少しくらい俺以外と居る事を許容しようって譲歩だ」
「はぁ」
それが譲歩か。
それって譲歩か? どうしようもないからじゃないのか。
でも、ここでわかんないとか守れないとか流すとさらに煩くなりそうだ。
わかったと、俺は頷く。
本当にわかっているのかと幼馴染は眉を顰める。きっとわかってないことは、あとで知れるだろう。
その時は、その時だ。