「あれー、迎えに来てくれたの?」
「当たり前だろ」
GWの最終日。
俺は学園へとやってきた。望んでやってきた場所だ。
門に案内をよこすといっていたけれど、やっぱりそれは幼馴染だった。
「……髪、切ったのか」
「ああ、うん。長かったし……」
綺麗に切りそろえた襟足を、幼馴染の指が撫ぜる。
くすぐったいからやめろといってもやめはしない。
「伸ばせよ、長いほうがいい」
「えぇ? そんな、短髪ってほどにもしてないからいいだろ」
「伸ばせよ」
強い口調で幼馴染は言う。
俺のいう事を聞け、というように。それに従えと圧してくる。
俺はわかったよと曖昧に笑った。けれど、伸ばしはしないだろう。
「お前のクラスは俺と一緒だ」
「ふーん」
「席は俺の横」
「どこまで束縛すんだよ」
「お前が理解するまでな」
二人きりだから、俺は嫌そうな表情を向けてやる。
幼馴染はきっと隠しはしない。俺が特別だということを。
どこでも一緒だ。
俺を捕まえて、離さないって全てで言ってる。それを俺が重たくてしんどいと思っているのを知ってもなおだ。
「お前は今まで通り、俺の傍から離れなきゃいいんだよ」
優しく笑う。それは俺に向けられているのだが俺は欲しくはないものだ。
その根底には威圧。幼馴染は変わらない。
俺もきっと、変わらない。
彼、という人を知った俺は彼以外を求めていない。
幼馴染は、まだ俺の意識の内側にあるほうだけれども。でも俺は、幼馴染に応える事はできない。
それを幼馴染もわかっているのだろうけれども。
それでも俺を欲するのは何故なんだろうかと、少しだけ思った。