消しゴム
 教室、左から二番目。一番後ろが僕の席。
 その隣、校庭の見える窓側の一番後ろ。日当たり最高の席。
 そこがヤンキーくんの席だ。
 彼は授業に出たり出なかったり、ということはなくていつもいる。
 遅刻はするが、学校にいるときはちゃんと授業にでている。昼休みとかは消えるけれど。
 ノートは開いているが真っ白だ。
 つまらなさそうにいつも校庭を眺めているのを僕は知っている。
 そして今日は、小さくなった消しゴムを指先でぐりぐりして遊んでいた。
 暇つぶしなんだろうなぁと眺めていたら。
「あ」
 それが跳ねて転がった。
 そして僕の足元にくる。ヤンキーくんの目もその動きを追っていた。
「…………はい」
「お、おう。ありがと」
 僕はそれをとって渡してあげる。
 ヤンキーくんは瞬いて、ぶっきらぼうにありがとうといってそっぽを向いた。
 耳まで真っ赤なのを僕だけが見ている。
 かわいいなぁと思った所で先生にあてられて、僕の意識は授業に戻った。



〜〜じつのところ。



 
 ころんところがった。それは本当に偶然だ。
 それを隣のアイツが拾って、少し眺めてから俺へと差し出す。
 俺の手にころりと落ちたそれ。
 詰まる声を押し出して一言返すのが精一杯だ。
 もうこの消しゴムは失くせねぇ。
 あいつが触ったから失くせねぇ。




 デレ迷子感。


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