【レクシス幼児化で】
どうして自分はこうも学習能力がないのだろうか、と。
レクシスはうな垂れた。
鏡の中の自分は14歳ではない。明らかに2、3歳だった。歩くのもちょっとヘタですぐにこけてしまう。
服はないので、シャツをだぼだぼだがかぶっているしかなかった。
「あいーだしゃんの、あれかなぁ」
どうにもこうにも喉が痛くて、そういえば貰った薬があったと飲んだ。
さすがにこういった薬にまでなにか仕込んでいないだろうと思っていたのだが甘かった。
甘かったのだ。
『……背中に乗るか?』
ほら、と傍に黒いのが身を伏せる。
レクシスはこくりと頷いてその背に跨った。跨ったというより、しがみついた。
『扉は俺が開けよう』
こう小さくては動きもままならない。
おそらく1日くらいで元に戻るはず。今日1日は学校は休んでしまおうと思った。
部屋の扉を開けて、階下に降りてリビングに。
その気配を感じておはよーというバイトルートは背中を向けたままだ。
「ばいとるーと」
その声に違和感を覚えバイトルートは振り返り、手に持っていたカップを落としかけた。
「なん、えっ!?」
驚きのまま、固まる。するとそこにジルヴァもやってきて。
「レクシス、おはよ」
「はよぅ」
「え、いやなんでお前普通に挨拶してんの!?」
「え?」
見た目に動じないのはジルヴァが精霊であるからだろう。
レクシスを見て、あっと何かに気付いたようで、そして抱えあげた。
「……かわいい」
「うー……」
「……俺、もらってもいい?」
「だめだろ!」
こてんと首を傾げたジルヴァにバイトルートはすぐさま、駄目だと言い返す。
そしてレクシスがこんな状態で、授業にでるわけにもなと思い皆で自主休講した。特に、絶対に受けなければならないという授業がなくて本当によかったと。
しかし。
「三人共休んでどうしたの? 風邪?」
「お見舞い持ってきたよ」
「別に俺は来たくてきたわけじゃ……」
と、リイハアルト、ガシュル、ランドールがやってきて。
「ぁぅ」
「あっ」
「ジルヴァ、隠せ!」
と、言った時にはもう遅かった。
「えー、レクシスどうしたの? ちっちゃい! かわいい!」
「世の中には不思議なことがあるもんだね……どういう仕組み?」
「俺は夢でも見ているんだろうか……」
と、すでにわちゃわちゃにされてしまった。
「ぁぅ、やっ、ひゃ!」
「こちょこちょこちょ」
リイハアルトがレクシスをくすぐる。こうやるとちっちゃいこって喜ぶって聞いたというのの実践らしいがレクシスとしてはたまったものではない。
やめてと暴れるがそれも可愛らしく喜んでいるようにしかみえなかった。
「次、俺!」
そう言ってガシュルが抱えあげて、上へ放りなげる。
「たかいたかーい!」
これもちっちゃいこが喜ぶ以下略。ということらしい。レクシスにとってはいい迷惑。
「や、やめてやれよ涙目になってるだろ……」
そう言ってランドールはガシュルからレクシスを救出した。
ジルヴァとバイトルートではさすがにそれはできなかったので、ランドールに助けてやれといったのだ。
レクシスはひしっと、今はここが一番安全とランドールにしがみつく。
「…………」
とてもかわいい。
そのまま、レクシスを守りつつ遊んでいればそのまま疲れて寝てしまい、朝だ。
「ん……」
小さな声が聞こえて、ランドールは目を覚ます。
瞳開ければそこは自分の部屋ではない天井で、そういえばと昨日からの事を思い出した。
そして、自分の身体の上にある重み。
「…………」
恐る恐る、そちらをみれば。
すやすやと眠る元の大きさのレクシスがいた。
シャツ一枚だけで、生足。
「…………なんだよこれ、ちょ」
どうしたらいいかわからない。
そう思って、もう一度寝ようと思ったが逆に目がさえる。
「……襲わなくていいの?」
「!?」
と、上からかかった声。瞳あければガシュルが楽しそうに覗き込んでいる。
「な、なにいってんだよそんなことするわけねーだろ!?」
「っ!」
ばっと起き上がった瞬間、レクシスの頭が落ちてごんっと鈍い音。そしてその衝撃でレクシスは目覚めた。
「いった!! ……あっ、戻ってる!」
わぁいと自分の手を確認して、そして自分の格好をみて。
「……着替えてきます」
「お、おう」
「朝ごはんはパンケーキがいいな」
じゃ、それでと了承しつつ何事もなかったかのようにレクシスは立ち上がり部屋に向かう。
「……で、生足どう? さわった?」
「さわってねーし!」
そんな風に、しばらくランドールは弄られることになる。
ランドールさん役得。
めずらしく!役得!
あとこれきっとリイハアルトとか寝たふりだと思われる。