主の選考基準【80000りくえすと】
【第七師団引き抜きの経緯】


〜サイラード〜
 ふと思って聞いてみた。問を投げられたサイラードは少しばかり沈黙を置いて、レクシスに話し始める。
 それは何故、どうして第七師団にいるのかという話だ。
「もともと俺は第一師団にいたんですが」
「叔父上のとこなんて規律万歳の堅苦しいところだろうがァ。気楽な俺のとこにこれて仕事も楽になっただろ?」
「いえ、まったく」
 返ってくる言葉などわかりきっていたのだろう。キアティスはそうかと愉快そうだ。
 サイラードは溜息ひとつついて、レクシスに続きを紡ぐ。
 出会ったのはこの人がまだ10にもならない頃だったと。
「俺はその頃、下っ端中の下っ端で」
「サイラードさんにもそんな時代があったんですね……」
「誰にでもあります。あの人にはありませんが」
「俺は特別だからな」
 あの人は放っておきましょうとレクシスは気に留めない。サイラードもそうだなと頷く。
 養い子と部下のそんな様子を眺めてキアティスは笑うばかりだ。
「軍に入りたて、若かったんですよ。で、新人の演習がありそれをキア様が見に来て」
「俺の師団は頭が固くて古いやつらばっかりだったからな。若いのもいるだろうと思って下見にいったら、イキの良いのがいると思って」
 当時、キアティスの師団は年寄り、お目付けといった類の人間が占めていた。そして、その彼らが選んだ団員ばかり。自分の好きにできないそれにキアティスは不満を持っていたのだ。
 そこで、話の分かる兄貴分が欲しいと喚いて新しい人員を好きに一人、選んでいいと言う事にしたのだ。
「そこで目を付けられたってことですね」
「ああ、その通り。本当にどうして目を付けられたのか……」
「お前苦労しそうな顔してて、迷惑かけたら楽しそうだなって思ったんだよ」
 と、言うものの。
 サイラードはキアティスが自分を選んだ理由を知っている。
 先ほど紡いだ言葉も本心なのだろうが。
「……キア様は俺を引き抜く時にいったんですよ」
「おい」
「何を、ですか」
「俺とくれば」
「おいサイ、サイラード」
「あいつら皆ぶっ殺せるようにしてやるって」
「……えぇー……」
 もう誰を、と聞くのさえ馬鹿らしい。10歳の頃から俺様だったんだなぁとレクシスは憐憫の目を向ける。
 一体どうしてこんな性格になったのか。
「10歳のキア様は語彙が無かったので、何かあればぶっ殺すでした」
「わぁ……」



「おい、お前」
「……なんでしょうか、キアティス殿下」
「お前、俺と来い」
「は?」
「俺とくれば、あいつら皆ぶっ殺せるようにしてやる」
「……はい?」
「そんでついでに、俺の気に入らないやつをぶっ殺す手伝いもさせてやる」
 どうだ、と言う。
 意味がわからないと、20になったばかりのサイラードは思った。
 思ったのだが、この目の前の小さな少年は、すでに王の風格を持っていた。
「答えろ、ぶっ殺されたいのか」
「……ぶっ殺すしか言えないんですか」
「これが一番しっくりくるんだよ」
 うるさい、と少し気にしているのか少年はそっぽを向く。
 まぁ、面白そうだなと思って、そこで膝をついたが最後。
 それから年寄り勢をすべて廃し、右腕と呼ばれるようになるまで五年。





〜アイーダ〜
 どうして第七師団にいるのか、一人聞けば皆はと気になったのでレクシスは近くにいたアイーダにも訪ねてみた。
「わたしがここにきた理由? それはキアさまに保護されたからぁ!」
「保護?」
「うんうん、わたしね、悪の秘密結社に捕まって人体実験とか? そういうのされて色々されて生まれたかんじ? で、キアさまがどーんばーん! ってきたときに助けてもらったの」
「……ほんとに?」
「嘘かな、本当かな?」
「本当のような気もしつつ冗談のような気もしつつ」
 唸るレクシスに、教えてやろうかと誰かが言う。けれどもそれをダメ! とアイーダが遮った。
「唸ってる時間が楽しいんだから!」
「……僕と似たような感じ?」
「似てるっていえば、似てるかなぁ?」
 なんとなく、だが。
 ちゃかしていっているがそれは真実なのだとレクシスには思えた。
 きゃらきゃら笑っているのは気にしているのか、それとも気にしていないからなのか。
 どちらなのかはわからないけれども、アイーダは楽しそうだ。
「ちなみに助けてもらった時にね」
「はい」
「私は全裸だったので、キアさまははれんちー!」
「おい、アイーダ」
「うわぁ……はんざいはんざい」
 しばらくこのネタでいじったけれどいい加減にしろと怒られた。



 げほりと、喉から水がせりあがるのを少女は吐き出した。
「お前、生きてるのか?」
 人の言っていることは理解できるが、声にはならない。
 自分は何かと言えば、あの水の中で生かされていただけだ。無為に知識を詰め込まれ、ただそこにあるだけの生。
「……来るか? それとも死ぬか?」
 伸ばされた手を、何故かとってしまた。手をとって、初めてそこで世界が開けたと思えた。
 来るなら助けてやる、と。目の前の男の口端が上がるのが見えた。
 それから少女はアイーダとして、ある。




数人と思いつつ。
ものすごく長くなりそうだったので二人で…!
苦労人のジュリアと、同期のギアルトは軍校から上がってきて。
俺はこの門を次に通った奴らを第七にもらうとか勝手に決めてたキアさんに拉致られました。
ナルヴィはギアルトが声かけて。
シノは、諸事情で一瞬、第三寮で一緒になり。面白かったので声かけた。
センリはまだ出てきてないのでちょっとまた別の話。


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