【キアティスとレクシスでお昼寝中】
それは勉強中の事だった。
「今日は天気いいなァ……ここでやらず庭でやれば?」
「キア様」
「いいだろ。俺が面倒みてやるよ」
だめです、と言おうとするジュリアの言葉をさえぎって。
キアティスは勉強中のレクシスをかっさらった。
あー! と叫んで止める間もなく。まぁこうなるだろうなと思っていたレクシスは読みかけの本をしっかり持って担がれた。
連れ出されたのは詰所にある庭の一角。
大きく枝葉広げた大樹の下だ。
「キアさん、僕は勉強……」
「はァ? 俺は息抜きと思ってお前を連れ出したんだよ。ほら、本なんてそこ置いとけ」
言う事を聞かなければきっとこの手にある本も放り投げられるだろうなぁと思って。
レクシスは言う通り、その本を傍に置いた。
するとキアティスは満足そうに笑み浮かべ、ごろりと横になる。
「…………」
「…………お前も寝転べよ」
「別に眠くないですし」
座ってるだけでも風が気持ち良いと瞳細める。その様子を見上げて、キアティスは笑っていた。そうか、と上機嫌。
「僕、頑張ってます?」
「ああ、俺が思っていたよりも色々習得が早い」
「そうですか。よかった」
「何が」
「見限られてないな、と思って」
その言葉にぴくりと、キアティスは反応して起き上がる。
そして座り直し、レクシスと向き合った。
「あのな。そりゃ最初は色々言ったけどな」
「はい」
「俺はお前を捨てるつもりなんてねェし。たとえこれからお前がなんか馬鹿やったとしても助けるつもりだ。俺の子に、名前変えるかどうかはおいといて、気持ちはなってていーんだよ」
レクシスは瞬いて、笑みを零す。
いらだっているわけではない。ただぶすっと不機嫌。さっきまで上機嫌だったのにだ。
それは自分を心の内に、この人がいれているからなのだと思っている。
「んだよ、笑いやがって」
「いや、うん。キアさんは面白いなって」
「レクも十分、俺と張り合ってるぜ」
「なに、ちょ!」
そう言って、頭をぐりぐりとかき混ぜてキアティスはレクシスと一緒に草の上に転がった。
木陰でちょうど心地よい具合。二人でざわめく木々を眺める事になる。
「でも、父親にはやっぱりどうあっても若すぎますよ」
「だなァ。でも兄貴っつーのもな」
「……おにいちゃん」
「気持ち悪いな」
「兄貴」
「それもなんか違う」
「…………パパ」
「無理だな」
そう言って、二人声をあげて笑ってやっぱり、キアさんに落ち着いた。
「キアさん、ありがと」
「どーいたしまして」
何が、というのは聞かない。なんとなく言いたいこともわかるからだ。
そうして、二人で話を重ねているとぽかぽかとした陽気が眠りに誘う。
いつのまにか、どちらが先か眠りの中だった。その姿を見つかるまで二人一緒に夢の中。
「……起こします?」
「いや、もう少し寒くなれば自分で起きるだろう」
「サイ様も甘いですね」
二人を見つけたサイラードとジュリアは放っておくことにした。
仲良く寄り添って似たような格好で、眠っているのだから。
そんな、ある日の事!