囁いて
 愛しているよ、と囁いて。
 言葉が届かないことはわかっていても囁いて。
 綺麗な真紅の瞳は閉じられている。表情もない。そもそも、もう表情浮かべる事もできないのだ。
 彼は生きては、いないのだから。
 それでも、愛しているよと囁く。
 この言葉は呪いのように、きっと彼を縛るだろう。
 生を巡る旅の中で、自分に縛られるだろう。
 そう知っているから、何度も紡ぐ。
 死してなお、紡ぎ続ける。
 あいしているよ、と。



なまくびにあいをささやくいけめん。


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