ねぇ、僕等は勝てるんだろうか。
そう零した蒼穹の口元は綺麗な笑みなのか、歪みなのか。
その笑みを向けられた男はまたかというような侮蔑の視線を投げた。繰り返されるその言葉にはもう飽き飽きしたのだと。
「そういう目するから鬼畜眼鏡とか言われるんだぜー?」
「言いたいやつには言わせておけば良いのです」
そう言って眼鏡をくっと中指で押し上げ、青銀の長い髪を男は払う。その様子をもう一人は楽しそうにみているだけ。
手を伸ばして戯れに。誰もいないことを知っていてその髪を一房、蒼穹は手にとって遊ぶ。嫌がられる事をわかっていてだ。
「あれ、いつもは嫌がるのに?」
その手を払いのけるのさえ面倒だと短い声。面白くない、と思った蒼穹はそのまま首筋に手を滑らせた。
耳の裏から頬をなぞる。その行動の意味がわからないと冷えた視線を向けられてもやめはしない。
「舐めてもいい?」
「その舌引き抜いてもよろしいなら」
「ははっ!」
できないくせに、と。
ゆるゆる頬をなぞっていた蒼穹の指が、その手が男の首の後ろへ回り力任せに掴む。その瞬間、息が詰まった。でもそれもいつもの事で男は表情を崩さない。
逆に笑みの形を作る。貴方のしている事など、なんでもないのだと言うように。
どげざ!!!