かみつく
 咬みつくような。
 というのが、一番しっくりくる。それを理解して、されてるな、と他人事のように思った。
 けれどこれには覚えがある。
 突然だった。
 後ろから抱きすくめられ暗がりに連れ込まれる。
 目は、手で覆われて塞がれた。抵抗する間もなく鮮やかに。
 唇をなめて重ねられた。
「は」
 甘い甘い。
 吐息が甘い。
 あの人だとすぐにわかった。
「なんでここにいんの」
 返す言葉を描く前に、まぁいいかと落ちる。
 僕はもう、答えなくてよくなった。
「俺を殺しにきたんだよな。いいよ、殺してみて」
 俺の居場所がわかったら。
 それだけ言い残してブラックアウト。
 目覚めて感じたのは痛みと、幸せ。


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