これがいつもなら
 教室に入ればいつもの顔。
 そしていつもの如く授業、休み時間。そして昼休み。
 その間にする話も他愛もないものばかりだった。
「そういえば、結局コタはどうなの?」
「どう、って? 何が?」
 ちゅー、とパックの牛乳飲みながら佐和の言葉に質問で返す。
「色々なんだけど。永久とか、あと一年のやばいほうの隠乃」
「あー……蓮は何も言ってこない」
「えっ、もっと攻めろよ蓮……あっ、いやなんでもない」
 じっとりとした視線に失言と、雅哉は口を閉じる。そして、やばいほうはと話を転換した。
 そういえば、今日は此処に現れていないな、とも。
「朝、説教かましといた。そしたら大人しくはなった、かな。それが続いてくれりゃあいいんだけど」
「説教って……あー、でもなんとなく想像できるね」
「多数対あいつだと収集つかなくなりそうなんだけど、一対一だったら充分言い聞かせられる。多数だと、横槍いれてくるやつがいるからわーっと盛り上がるんだろうなと」
 俺は考察したわけだ。
 琥太郎は言って、そういう感じしないかと問う。
 言われてみれば、確かに。
「そしたらやっぱり、コタの班には隠乃君いれとくねー」
「は?」
「えっ。ほら、歓迎会。あれの割り振りって僕の管轄なんだよねー」
 ランダムって言ったけど、そこそこ恣意的にはできるよ。
 佐和は笑う。永久の許可は必要だけれども、やるのは僕だから内緒で言えばよかったのにと。
「ええー……」
「ま、でも勝手にやってもあとでバレたと思うけど。だから言っておいて正解」
「でも、佐和がやるなら先に何人かはそっと組めるよな……」
「何、くっつけておきたい人あればこっそり言うといいよ、青風」
「あとで書いて渡す」
 青風は佐和に頷いてみせた。二人に任せておけば大丈夫か、と琥太郎は思う。
 二人のそういう連携、そして仕事っぷりは経験上、信頼に値しすぎるほどだと知っているからだ。
「あ、もう昼終わるなー。すげー静かでよかった……」
「そりゃ、食堂行かなかったし。購買で済ませたからね」
「俺はイベント的な意味で行きたかったが」
 じゃあ一人でいけと三人からいっせいに視線が刺さる。今、あそこにいってきゃーきゃー言われ、疲労を感じるのは勘弁してほしいところだ。
「風紀の仕事、増えてる時にさらに増えたらいやだしなー」
「俺ら揃えば、騒がしくなるからな……」
 昼くらいは静かに。
 そう思って空いている静かな教室を、その権力ちょっとだけ借りて使用しているのだ。
 まぁこれくらい、これくらいという所。
 騒いでいるわけではない。ただ静かに過ごしたいだけだ。悪い事をしてもいない。
「予鈴ー……んじゃ、いくか」
「そうだね」
 席を立つ。
 昼はもう終わり。あとは授業を受けて、そしてそれぞれの仕事をするわけだ。
 そして今日はレクリエーションについての会議の日。
 正直気が重たいと琥太郎は一人ごちる。


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