何事もなく夜が明けて、琥太郎は携帯に何か連絡がきていた事に起きて気が付いた。
一つは姉から。いつものどうでもいい内容だった。
もう一つは時陽から。
ご苦労、頑張れとだけのメッセージだ。
「何を」
あとでどういうことか聞いてみるか、と思いながら欠伸噛殺し準備する。いつもより少し、遅い時間だと時計みつつ支度。
着替えて部屋をでればもうそこに誰かいる気配はない。
顔を洗って、身形整えたら食堂へ。
そこでもいつもの、普通の朝だった。のんびりしつつ学校へ向かえば、それもまたいつもの朝。
そのはずだったの、だけれども。
「スオウ! おはよ! なぁ今日は昼飯一緒に食おうぜ!」
「あー……なんで?」
「一緒に食べたいから! 俺が誘ってるんだ、いいだろ!」
職員室に用事があり、向かったところで美景に捕まった。
にこやかな、満面の笑み。それは断るわけがないと思っているようなもので。
「先約があるから無理だ」
「なんだよ! 俺のほうが大事だろ!」
「俺の方、って……」
いう事を聞かない、わがままな子供。
そうとしか見えない。なだめすかして一時を凌ぐ事はできるだろうが、それは根本的な解決にはきっとならないことも分かっている。
「しばらく風紀委員の仕事のほう優先で食うから無理だ」
「風紀委員? そんなのどうでもいいだろ」
「よくねーよ」
「ふぐっ」
どうでもいい、という言葉にはカチンときた。
琥太郎は美景の鼻摘んで黙らせる。そして真っ直ぐ視線合わせて強く言い放つ。
「あのなぁ、俺は委員長なんだよ、一番偉いンだよ。そんなやつが仕事しなけりゃ学園まわらねーし困る。俺には責任があるんだよ。お前、仕事しねーやつはどう思うよ」
「っ! あ……悪い、とかダメって思う」
「だろ。お前と飯くって、俺をそうさせる気か」
鼻を離し問う。
そして言い放てば、美景は黙り込んだ。
「そうさせたいのか」
さらに一歩、踏み込むように強く言い放てばそうさせたくないと小さな声が返ってくる。
それに琥太郎は笑み深くした。
「そうだろ、だから無理言うなつってんだよ。暇ができたら、一緒してやるから」
「! ぜ、絶対だからな!」
「おー。ほら、授業始まるから教室もどれ」
強く背中押して、一年の教室の方へ向かわせる。足がそちらを向いたことを確認して、琥太郎もまた教室へと向かった。
「あーやって、ひとつずつ納得させりゃ抑えられるか」
けれどそれはあくまで自分にかかることだけだ。
大多数の中で接した時、上手くいくかはわからないなと琥太郎は思う。