挨拶ひとつ
 琥太郎は部屋をでてすぐにため息一つ落とした。短時間だったのに無駄に疲れた。
 これは捺時も大変だと思う。
 それと同時に携帯が震えた。みれば先ほどまでいた捺時からだ。
「ええー……」
 そこにある文面はとてもいただけないもの。
 美景はお前を気に入った、がんばれと短くだ。
「まー……なんかそんな気はしてた、けどー」
 けれど、あれはあしらえる。うまく動かしていくことができるなと接して思った。
 そんなに難しいことではない。
「あのずけずけっぷりをもーちょっと、抑えてくれりゃいいんだけどな」
 そう零しながら部屋へ戻る。
 その玄関を開けようとして、琥太郎の手ははたととまった。
 この先には永久がいるのだ。何か話をとか言っていた覚えがある。
「めんどくせぇなぁ……」
 今、色々と突っ込んで話を吹っかけられればイライラとすることは必至。
 それでボロを出さないとも限らない。
 暇な時にどう対応するかシュミレーションはしていたが、それでもどう転ぶかわからない。
「……隠乃相手で疲れたつって逃げるか」
 これがきっと一番良い。
 琥太郎はそう思って扉を開く。思ったとおり、永久はすでにそこに帰ってきていた。
 靴があるのはこの部屋にいる印だ。
 共有スペースに踏み入れば、ぱちりと視線があった。
「……おかえり」
「お、おう。ただいま……」
 先に声をかけたのは永久だ。おかえり、なんて向けられると思っていなかった琥太郎は驚いて永久を凝視する。
「なんだ」
「や、別に……」
「は、俺に見惚れてたのか?」
「バカじゃねぇの」
 これは冗談なのか本気なのか、判断がつかない。
 薄ら笑って琥太郎は自室へと向かう。永久は何も、言ってこない。
 それが逆に気にかかりもする。
 なんだか少し、嫌な感じだと重いながら琥太郎は扉閉め、自分のベッドに倒れこんだ。
 濃い一日だった、と思い返す。
「……だめだ、このままだと寝る。先に風呂はいろ」
 のろのろと起き上がり支度をする。制服のブレザーは脱ぐ、ネクタイも外した。
 ジャージなどもって、部屋を出ればまだそこに永久がいる。
「風呂、入るからー。つか、お前もテレビなんか見るのか、なんか以外」
「テレビくらい見るだろ……」
 それもそうだ、と琥太郎は笑って風呂場へと向かう。
 食堂などでは突っかかってきたのに静かだ。そこに違和感感じたが、いいかと琥太郎は流した。


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