回線越しで
 コールは数度、はいと聞きなれた声が琥太郎の耳に響いた。
「あ、佐和? 俺俺」
『俺俺詐欺には引っかからないよ。どうしたの、コタ』
「あのな、歓迎会のレクリエーションなんだけど」
『あー、それ僕じゃなくって会長に話して』
「えぇー……」
 文句を言う、その前に電話は保留になった。
 となると、この次に出てくる相手は永久以外にない。
「青風、変わって」
「無理」
 と、言っている間に保留音が切れた。
「あ、もしもし。せーとかいちょー殿ですか」
『何の用だ、早く言え』
「はいはい。っとー、歓迎会のレクリエーションなんだけどチームって生徒会がランダムに組むってなってるじゃん。ちょっと何組か、こっちの指定であててほしんだけど」
 その言葉には沈黙が返答だった。
 何か気に入らない事でもあるのかと琥太郎は眉根寄せた。
『その必要性は?』
「何人かを風紀の監視下に入れる」
『その監視下に入る者というのはどういうくくりだ』
「風紀の主観」
『却下だ』
 却下、という一言にはぁ? と思わず盛れた。永久の声は聞こえないが琥太郎の様子で断られたことは用意に想像できる。
 けれど、琥太郎もはいそうですかと引き下がる所以はない。
「却下理由は?」
『このレクリエーションは生徒全員が有意義に過ごすためのものだ、平等に。チームをいじればそれは贔屓である平等ではなくなるからだが』
「まー、もっともなんですけど」
 それはわかる。けれど有意義に過ごすならば多少の考慮は必要だろうと、琥太郎は続けた。
 何も全員、というわけではない。問題児だけでもない、特に守られる側である者もいるのだ。
「何も1チーム丸ごとってんじゃないんだけど。風紀が必ず一人いるチームに、何人かこっちがあげた生徒いれてほしいってんだよ。よく絡まれてる小さいのに、やらしーことしよーとしてる奴があたったらどーすんだよ。そこに風紀いれば牽制になるだろ」
 そういう組み合わせがまったくない、とは言えないのだ。確率はゼロではないと琥太郎は言う。
「もし、本人がそれはいやだっていったらランダムでいーけど、自己防衛を考えるやつは頷く」
『……保護下に入るのを希望するやつには、それぞれ風紀をつければいいだろう。それに、お前は保護じゃない観点のやつもその枠に入れようとしてるだろう』
 その言葉に、短くああと頷いた。
 むしろそちらのほうが、重要なのだ。
「つか、風紀をそれぞれにつけるとかさ。チーム崩れるだろ……人数あわなくなるだろーよ。それなら風紀と一緒に最初から行動させとけよ」
『そこは変則人数チームを作る』
 変則って、と琥太郎は零す。それこそ、偏るのではないかと思いつつ。
「……じゃあ譲歩でいい、譲歩。最初にそっちがチーム決める。それを視て、こっちが変えた方がいいってやつがいたらメンバー発表の後に交渉しにいく。それでチェンジするチーム双方で了解とれればオッケーにする。この事は、事前に周知」
 これならいいだろ、と琥太郎は言った。
 その言葉に返事はない。どうなんだ、と再度促せば少し待て、と永久は言う。
 受話器向こうから話し声が小さく漏れ聞こえてきた。おそらくこのことを他の生徒会メンバーにも言っているのだろう。
『わかった。それでならいい』
「どーも。それじゃよろしく」
『待て』
「あ?」
 受話器を置こうとして、そして止められた。耳から離れかけた受話器を聞こえる位置に琥太郎は戻す。
「なにー? 俺やる事一杯あんだけど」
『今晩部屋に居ろよ』
「えぇー」
 そんなのは聞く義理はない、と言い返そうとする前にがちゃんと電話は切られる。
 思わず、琥太郎は受話器を睨んだ。受話器の先にいた永久を。


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