嵐が去って
「はいはい、じゃーなー」
「またなー!」
 風紀室のドアまで琥太郎が見送る。姿が見えなくなるまで見送って、そして扉を勢いよく閉めた。
「なー! 俺あれ、うまくあしらったよなー!? うおおお、でも疲れたわー……誰か肩揉んでー?」
「ちょっと被害覚悟してたけど何もなかったな。あと肩は自分でやって」
 問題児達が去って何事もなくほっとした風紀室。いつもの空気に戻りかけるそこに安堵の空気が流れた。
「にしても、にぎやかだったな」
「そだな」
 はぁ、と一同同じタイミングでため息だった。
「ま、いーか。仕事の続きなー」
 自分の席へ戻り琥太郎はひらりと一枚の紙を持ち上げて眺めた。
 そこには新入生歓迎会、とある。自分も去年参加したものだ。正直、良い思い出はない。
「……めんどくせ」
 去年は、鬼ごっこだった。高校生にもなって鬼ごっことは、とも思ったがやればそれはそれで楽しかったし、面白かった。けれど、それも一時で、途中からいじめのように追い掛け回された記憶が痛い。
「なんか、安全策とかいわれても例年通りとしか言いようがないよなー。多少配置人数とかは換えていくし、ルールも別だけど」
「ま、そうなるな。生徒会から内容はあがってきたんだろー?」
「ああ、うん。例年通り、クラブ委員会紹介やって、そのまま懇親会が1日目。2日目はレクリエーション。今年は、校内ラリーだって」
「無難な感じにまとめてくれたわけか。鬼ごっこよりはマシだな」
 俺もそう思う、と琥太郎は青風の言葉に頷いた。
 鬼ごっこは、追いかける方追いかけられる方で無法状態になることがあった。去年は乱闘騒ぎも起こったのだ。
 ラリーであればある程度、この場所という風に限られるし通過チェックも行えるというもの。
「……各学年一人ずつチームだよな。チームはランダムに組むかー。生徒会が組むっつーけど……これ多少、細工のオネガイしていーよな」
「あー、いいんじゃね?」
「時陽と隠乃くっつけてやろう。あ、美景の方な」
 その一言に、風気室の中が一瞬ざわついて静かになった。空気の変わりように琥太郎はダメか? と尋ねる。
「やって仕組んだってバレた時の制裁覚悟ならいいんじゃないかな……」
「コタさん……責任かぶんのはアンタ一人っすよ……」
「うん、いいんちょ一人なら別に俺らは……」
「ちょ、俺だけとか! でも、下手に誰か見知らぬ人とくっつけて暴走されるよりは、時陽の後ろ歩いてもらったほうが安全じゃね?」
 だって、あいつ好き勝手しそうだしと。
 確かに、言われてみればその可能性が非常に高いと思われる。適当に、運で誰かとくっついた場合、彼がどこかへ走り去って行きそうな気がしないでもない。
「委員長権限でそうしてやろー。やー、たーのしみー!」
 嫌がらせ半分、かもしれなかった。
 にこやかに琥太郎は笑いつつ、生徒会室へと繋がる内線をかけた。


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