思ったよりもと
 そして放課後。風紀室の空気は異様に重かった。
 それはすでにこの場所へ美景達が来ることが知らされていたからだ。当然のごとく、絶対的に接触したくないものは風紀室へ来ることはなかった。
 だがやむを得ず、風紀室に来なければいけない者はその部屋にいるわけで。
「委員長、なんできていいなんていったんですか」
「そーですよー、おかげで明らかに書類処理の人数足りてないんすけどー」
「あー! ごめんね俺が悪かった! 悪かったと思ってるからこーやって一緒にやってんだろー! 青風! 漫画読んでないで手伝って!」
「やだ」
 まぁいいんですけどー、と文句半分おふざけ半分。
 いつくるのか、とどきどきする中でその時はやってきた。
「スオウ! 遊びにきたぜ!!」
「はいやり直し」
 ガァンと勢いよく扉が開いた。その瞬間に手にしていたペンでもってぴっと美景を指して琥太郎は言う。
「やり直し?」
「ここには一回ノックして、それから静かにはいること。はい、外でてやって」
「なんでだよ! そんなことより遊ぼうぜ!」
「俺はそんなこと、って言うならそれくらいきちんとできないやつは嫌い」
「な、なんでそんなこと言うんだよ!」
 キーンと響く、大きい声だなと面々は思う。そして嫌い、の一言にぼろりと涙零し始める姿にぎょっとした。
 同じようなことが
「……できないなら、嫌いってだけでできるなら嫌いじゃないんだけど」
「っ!」
「できるなら、な」
 念押しのように琥太郎が言えば、美景は外に出て言われたようにやる。
 ノックして、それから静かに扉をあけた。
 静かに、というのも言われたこともちゃんとできるじゃないかとそれぞれ顔を見合わせる。
「こ、これでいいのかっ!」
「そ、よくできました。んじゃこっちこい。おいこら、前川は逃げるな」
「ちぇー、送り届けたら逃げようと思ってたのに」
 それじゃあ、と帰ろうとしたところを止めた。そして風紀室、その隣にある部屋へと二人を誘った。
 そこに座れと椅子を示す。
「茶でいーか? コーヒーいれるのめんどい」
「俺ジュースがいい!」
「ねぇよ、んなもん」
 子供だなぁと小さな声で言って、まだ自分も子供の域を出ないことを思い出して琥太郎は笑った。
「ほい。あー、お前はこの菓子くってな」
「ありがと!」
 ことりと美景の前に菓子の乗った皿をおく。そして琥太郎自身は英吾の前へと座った。
 そしてぱさっと一冊、丁寧に綴じられたコピー本を目の前に置いた。
「これ、マニュアル」
「はい?」
「親衛隊マニュアル。それ読んで、そんでどうするか決めて」
 琥太郎はまずはそれから、という様に頬に肘ついて英語へと笑いかけた。
 何を決めるのか――そう思って、英吾はその本をぱらりとめくった。
 そして最後のページを見て、ぎょっとする。
「どうするかって、これのことー?」
「そう」
「これ、とばっちりだよねー?」
「そうとも言うかもしれない。けどそんくらいはしていいって、俺は思ってるから」
 緩く、適当なようで実のところは、と思う。英吾は一つ、ため息をついた。
「なぁ! 何話してんだ? 俺もまぜろよ!」
「えー、君はもちょっと黙っててくれる? てか、菓子食ってた……もうないし」
「ああ、全部食べたぜ! なぁなぁスオウ、俺と遊ぼうぜ!」
「うん、まー……あー、何して遊ぶ?」
「え?」
 そこまでは考えていないのか、と琥太郎は思った。そしてこれは使えると意趣返し。
「じゃあ、どっちが長くしゃべらないでいられるかな?」
「おう!」
 いい返事、と琥太郎は笑った。そして英吾に再び、どうするのかと視線だけど物語る。


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