右から左
「親衛隊にくってかかった、と」
「うん、ほら、俺がこんなだからー、こんなもじゃーっていうのとはーっていう流れがあって!」
 こいつは、と琥太郎はため息をついた。
 愉快犯。このテのタイプの扱いは難しいのとそうでないのとに分かれる。こいつはどちらだろうか、と琥太郎はじっと見た。
 名前を前川英吾(まえかわえいご)というこの一年。ケラケラと笑いながら上機嫌なのが神経を逆なでる。
「お前、自分の親衛隊を管理できないタイプだな」
「する必要、ナイでしょー」
 だってあれは自分のものじゃないし。あいつ等が好きでやってるだけだし。
 そんな風に言い放った英吾を半眼で琥太郎は見詰めた。そして、横から声がかかる。
「おーい、そろそろ俺に隠乃その3を押し付けるのやめてくれねー?」
「あ? 仲良さそうじゃん、もうちょっと遊んどいて」
「その3ってなんだよ! 俺には美景っていう名前が!」
「はいはい」
 青風は美景の頭を掴んで座らせる。何気に扱いが上手いと琥太郎は視界の端のとどめながら、再び英吾へと視線を向ける。
「前川、お前は今日の放課後、風紀室に来い」
「えー? めんどい。イインチョーさんが来てよー」
「来い。そしたら飴玉やるから」
「飴玉で釣られるお子様じゃないし」
 右から左に聞き流すような雰囲気で。これは厄介なものだと琥太郎は思う。
 どうやって気をこっちに向けさそうか。
「いーから。お前の有意義な学園生活のためにも来い。おにーさんたちが色々教えてやるから」
「んー、特に教えられる事はないと、思うけどー? むしろ俺が教えてあげようかー?」
「は?」
「えっちとかー? 悪い事?」
 何を言うかこのガキは。
 というように琥太郎の視線は冷たい。そしてそれを面白がっているのは事実。頭が痛い、とひっそり思う。
「まぁ、いいからこい。待ってるからな」
「なぁなぁ! 俺もいってもいいか!」
「あー……ウンマァイイヨ」
 カタコトで返す。それでも美景は喜んだ。遊びにいく、というような雰囲気でだ。
 そのはしゃぎようは、本当に子供だ。どうしてこうなのだろうなと思いもたげる程度には。
「おい、どうするんだよ。これまで……」
「来るなって言っても来るだろ」
 青風は知らないからな、と零す。
 風紀室という自分達のテリトリーにこの、美景を入れるという事がどういうことか。
 まだ分かっていなかったからこそいえたことだったのだと二人が知るまであと数時間。


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