ここは食堂
 クラスに戻る。授業の合間の帰還だったので途中から参加した。
 そして休み時間になると同時に、どうだったのかと琥太郎と佐和は詰め寄られたのだ。
「あー……」
「うん、なぁ?」
「うん」
「名前呼びは回避したね。でもコタは懐かれちゃったかも」
 タラシこんでた、と佐和が言うとそんなことはないと琥太郎が否定する。
 けれどもう、それだけでなんとなく察することはできたのだろう。
 青風は半笑いで頑張れと言う。そして雅哉もだ。
「昼、食堂に行かない方がいい気がするよ……顔見たら絶対くる」
「ま、そうなるだろな……」
 どうする、と顔を見合わせる。そして結局、購買で済ませるかという結論に至った。
 明日からの事はまた考えるということで。
 それぞれ昼食を手に向かったのは中庭だ。ぽかぽかと心地よい。
「まだ何も騒ぎは起こってねーよな」
「報告はないね、一応」
 何かあれば琥太郎と青風の携帯にはすぐ連絡が入る事になっている。それは休み時間でも授業中でも変わらない。
 このまま何事もなければいい。そう思っていたのだけれども琥太郎の携帯がなった。
 かけてきたのは、自分の親衛隊のメンバーの名前だ。
「っ……、もしもし」
『食堂で事件でーす』
 了解、とそれだけ答えて琥太郎は立ち上がった。まだ焼きソバパン半分も残ってるのにと零しながら。
「悪ぃけど、これ俺の机んとこおいといてくれるか?」
「うん、片付けておいたげる」
「さんきゅ。青風」
「えー……」
 文句言いながら、青風も立ち上がる。雅哉と佐和に昼食の片付け頼んで、二人は食堂へと向かった。
 頭の片隅にまさかなぁと、いう思いを抱いていたのだがまさにその通りだった。
 ざわつく食堂、そこへ入れば騒ぎの中心は隠乃美景と、捺時。
「捺時ィ……」
「あとでシめる」
 青風の呟きに任せた、と琥太郎は言って騒ぎの中へと入っていく。
「この騒ぎ何、捺時。お前風紀なんだから騒ぎの中心にいるな」
「あっ、スオウ!」
「テメ、大人しくしとけ!」
 捺時が美景の首根っこ抑える。それから暴れて逃れようとするのを琥太郎は落ち着けるべくなだめた。
「わ! 捺時! いくら俺のこと好きだからってやめろよ!」
「好きじゃねーよ……」
「はー……ここじゃ皆の邪魔になるから移動」
 こっちにこい、と琥太郎は視線で示す。それに捺時は舌打ちしながら従った。
 だが、美景はそうではなかった。
「俺まだ、昼飯の途中! 話ならここでしようぜ! なぁ、スオウも飯まだなんだろ! 一緒に食べようぜ!」
 大きな声はよく響く。
 周囲の生徒からは咎めるよな視線を投げられるがお構い無しだ。というよりもそれを、気にしていないのか、感じていないのか。
「……隠乃、少し声のトーンを落とせ」
「美景でいいっていってるだろ!」
「……隠乃美景、ここはなんていう場所だ?」
「食堂だな!」
「何をするところかわかるか?」
「飯くうところ!」
「そう。で、ここは学校だ。お前のほかにも人はいる」
 そういう場所では、静かにしないかと琥太郎は小さな子に言い聞かせるように言った。
 けれど、美景はそんなの関係ないと言い放った。
 ミジンコからやり直せ、と琥太郎は思うが飲み込む。
「……青風ぇ……俺めげそうだわー」
「俺は関わりたくない」
「なぁ! 俺の話きけよ! 一緒に飯食おうぜ!」
 キンキン響くその声色。それは一層、その場の雰囲気を悪くさせた。


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