おそらくそれは
「ごふっ! ちょ、お前等、そいつの容姿詳しく……身長は?」
 飲んでいたコーヒーぶちまけそうになるのを堪えながら時陽は二人に聞いた。
 その少年がどんな雰囲気だったかを。
「俺よりチビ! 顔は……目ぇでかかったな。かわいいって感じか」
「金髪、目の色は黒か茶ぽかったっすー。服装はパーカーにジーンズ」
「まさかな……まさか……」
 一気に不機嫌さ丸出しになる時陽。そしてその言葉に青風と琥太郎は顔を見合わせ一つの想像にいたる。
 もしかして、先ほどあったのは噂の隠乃美景ではないかと。
「……大丈夫、この場所はばれてない、はず! わざわざ別のコンビニに変えたし」
「なんでそんなに時陽は嫌がるわけ?」
「それは俺が教えてやろう。時陽はなー、トラウマがあるんだよ」
 おい、と時陽が止める間もなく、二人へと話してくれたのは奏太だった。にやにやと時陽をおちょくりながら。
「昔、時陽のパンツがなくなる事件があってな」
「いやもうそれオチ見えた」
「犯人は美景ってことな」
「あたり。でもそれ、一枚とかじゃなくてだな」
 そこから先、聞けばうわぁと思わずなんともいえない声が漏れるようなことばかり。悲惨だな、と思わずにいられなかった。
 時陽かわいそうに。
 そんな視線が向けられ続ける。
「奏太お前、あとで覚えてろよ」
「あ、うん。忘れとくわー」
「というか、そんな問題児が学園にくるわけですか、そうですか……」
「コタ、ふぁーいと」
「お前等俺に全部押し付ける気だな」
 ニコッ!
 青風はじめ、もちろん美景を知っている者は同じ笑顔を浮かべた。
 君に全て、任せたよと。
「はあああ!? 俺一人じゃ無理無理!」
「えー、昼間、コタいってたじゃん。隠乃美景は俺がどーにかするって。根性叩きなおすって」
「えっ、ナニソレすげぇコタまじイケメン任せた。あー、これで俺はあいつから逃げる生活が終わる……! って思ってやるから本気で止めろよ俺に近寄らせるな潰してしまえ失敗したらお前を沈める」
「あはははは、時陽、だだもれ」
「俺そんなこといったっけ!?」
 言った、と青風は頷いた。多少、ニュアンスは違ってたような気もするが似たようなことは言っていたと押し切った。
「言った言った。わー、全部任せたー」
「ええええ!! 俺、俺もし本当にさっきのが隠乃美景だったらどーあっても、無理!!」
 琥太郎の叫びが店に響く。
 それもやがて笑い声に掻き消えて、その夜はお開きとなった。
 静かな学園に静かに戻ってやがて朝を迎える。


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