夜遊び準備
 召集の知らせを貰い、琥太郎と青風は風紀室へと顔をだした。
 そこにはまばらに仲間達がいる。
「ちーっす。なんかあったー?」
「特にはないけど、一年に何人か声かけといた」
「あ、捺にはもう風紀章渡した。見かけたらバシャウマァ! って感じで使ってやって」
 了解、と知った仲であるから一つ返事。それぞれと情報交換をしながら、琥太郎は自分の席についた、つもりだった。
「コタ、もうそこじゃなくてそっち」
「あっ、そうか俺こっちか!」
 ガタっと音立てて立ち上がり座るのは一番奥の席。そこは広い机であり、椅子も少し上等だ。
 落ち着かない、と琥太郎は苦笑を漏らす。
「急ぎのもんってないよなー。ならいいか。特に用事ないなら皆、帰ろう。んで準備しよう」
 自分の周囲を確認し、特に差し迫ったものがないということで琥太郎は部屋内にいた皆へと声をかけた。
 ここに居るものは、ほぼ金獅子と一緒に遊ぶ仲間だからだ。
 皆、そこそこに身の回りを片して部屋をでる。また後で、と声掛け合って向かう先は寮だ。
「今日何色にしたらいーだろか」
「んじゃ俺とオソロで」
「青かー、それにしよう」
 夜遊びが楽しみだ、と笑いあう。お互いが一番の友人だと思っている二人は仲が良い。
 おかげであらぬ噂も立っているのだが、別に言わせとけばいいではないかというのが二人の結論だった。
「にしても、総長が召集かけてくるってなんだろー」
「さー? なんか新しい遊びでも思いついたんじゃねーかな」
 それに乗る気満々でいるのも、また事実なのだけれども。
「あ、そういえば。俺、まだ寮の同室誰か知らねーし」
 と、ふと思い出したというように琥太郎は零した。基本的に、何事もない限りは二人部屋だ。風紀やなにやらの準備で部屋に帰って寝るだけ生活をしばらく続けていた琥太郎はまだ、同室が誰なにか知らない。
「俺は佐和だったよ。つか、同室くらい知っとけー」
「あだっ! 今ガチで叩いたな青風ー」
「と、俺の部屋ここ」
「あ、となりじゃん」
「……え、そこ?」
「おう」
 青風はうわぁと声を漏らした。それはおそらく、自分の同室が誰かなのかを知っているからだろう。そしてその反応から見るに、琥太郎にとってあまり好ましくない相手なのは察することができる。
「……誰?」
「ま、頑張れ。髪染める時はこっちこいよ、じゃっ!」
「あっ、おま、逃げっ」
 避難の声を向ける先はすでに扉の向こう。
 部屋の中に逃げやがったと琥太郎は睨みつつ、自分の部屋に向かった。同室が誰でも驚かない、そう思いつつだ。
「誰だっつーんだよー……」
 カードキーでぴっと部屋の鍵を開ける。その先、靴が一足あった。ということはいるということだ。
「ただいまでーすよっと」
 そして、共同で使う部屋への扉を開けると、いた。同室がいた。そしてその後ろ姿には覚えが、あった。
「……蓮?」
 名を呼べば、不機嫌そうに振り返る。間違いない、蓮永久だった。
「やばい、なんかもう俺今心の中草だらけだわー」
「は?」
「なんでもない。あーっと、一応よろしく?」
 その声に返事はない。まぁいいか、と琥太郎は思い自室へと向かう。お互い会わなかったのは、忙しかったからだろう。
「おい」
「んー、何?」
「今日は金獅子のやつは出るのか」
「あー、いくっぽい」
 答える必要は特になかったのだけれども、琥太郎は答えていた。そうか、と永久は一つ返し立ち上がると自室へと入ったのだ。
「なんなの?」
 不思議、と琥太郎は首を傾げまぁいいかと身支度に取り掛かる。
 部屋でスプレーをかける気にはなれない。風呂場がいい。けれども永久がいるのだからそれはできない。
「あれだよなー、俺が金獅子の傍にいるって知ったら、俺のこと聞いてくるよなー」
 そうなると面倒であり、また自分がボロを出さないとも限らない。
 極力接触は避けたい。同室ではあるが、おそらく顔をあわせる時間はそうもないだろう。そして、お互い世間話をするような間柄ではない。少し生活の時間をずらせば接触はないはずと思う。
「青風のとこでやるか」
 夜遊びに出る。その準備物もって、琥太郎は隣の部屋へと向かった。


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