お迎えに行きましょう
 式典関係が終われば次はクラスでのホームルームだ。
 隠乃宮学園のクラスはS、A、G、M、T、そしてZとなっている。
 家柄や成績順の判別も含まれるが、隠乃学園のクラス分けは少し変わっている。クラスの特色に合わせて名前が降られ、適正あれば好きなところへ進める。。
 SはスペシャルのS、勉強特化の特別進学カ。かAはアート、つまり美術。Mはミュージックで音楽、Tはトレーニングで体育だ。
 Gはジェネラル、普通科として。Zはそのどれにも属さず――というよりも厄介者の巣窟となっている。自らそこに入る者もいれば、そこに押し込まれる者もいるのだが。
 琥太郎たちのクラスは二年G組。だが普通科といっても、彼らの学力は高い。ある意味、SとGの差は家柄、そして進みたい分野への特化具合だ。
 だがS組よりもG組のほうがなじむと移動を希望する者もいる。要はそれぞれの個性に合うか合わないか、が問題らしい。
「俺、廊下側一番後ろ。どーせ授業中も問題起こったらでていくしなー……」
 琥太郎の決めた席。その前に青風が、横に佐和が。そして佐和の隣に雅哉が座った。
「そういえば、編入生みた? 二人だよね。一人は遅れてくるとかあったよ。というか……」
「みたみた。みたんだけど、俺たちその遅れてくる方にはあったことないし。時陽がノーコメントなんだよ」
 それが不安、と琥太郎は零す。
 編入生の一人は安城寺篝(あんじょうじかがり)という名だった。特待生としてこの学園に入学している。クラスはG。そしてもう一人はS組だ。
 そのもう一人は隠乃の姓を持つ。もし、時陽が問題なく付き合っている人間ならば事前に紹介があっただろう。だがそれがないことに不安が募るばかりなのだ。
「なっちゃんに聞いてみるかなー。前情報ほしい。時陽ノーコメまじ怖ェ」
「それがいいかもね。生徒会からわかる事あれば教えるから」
 琥太郎はありがと、と笑む。そうこうしているうちに教壇には担任が来ていた。
 去年と変わらぬその担任は数学教師だ。クラスの顔ぶれも変わらないのだから連絡事項を伝えるだけで終わった。
「よし、じゃあちょっと、言ってくるわー。あんじょーじ君の所」
「視聴覚室抑えといたから、鍵あけてまってるな」
「さんきゅ」
 青風の言葉に琥太郎はさすがという。必要な事、その先をわかっているのだ。
 教室をでればざわめき。
 それは風紀委員長だから、でもあるし周防琥太郎であるからのどちらも含めてだ。
「コタ様ー! コタ様ー!」
「おー、ようちゃん今日もかーいーね」
「きゃー! ありがとうございます! そうなのです僕かわ……そうじゃありません!」
 その中でぴょんっと飛び出してきた影一つ。琥太郎は彼が好きだった。
 なぜなら自分より小さいから。それ以外にも好きなところはあるのだが。
 彼の名前は與都次燿平(よつつぎようへい)という、琥太郎の親衛隊帳であった。
 栗色のサラサラの髪、大きな瞳。きゃぴきゃぴ、というのは表向きで実はとても男らしい彼。
「コタ様、編入生がすでに絡まれております」
「えぇぇ……」
 新学期早々からか、と琥太郎は思う。
 そしてそもそも、初手から絡まれるほどのあほなのか。問題児なのか。それはまだ会っていない今、わからない。
「誰に絡まれてんの?」
「Z組の上松君です」
 舌打ちして場所を聞く。その現場に琥太郎の親衛隊の中でも腕がそこそこ立つ者が割って入ったという。
 けれども、そうであってもいつまで持つかというところ。
「あげちゃんってそんな絡むなんてしないはずなんだけどー、どこ?」
「一階、校舎裏」
 了解、と琥太郎は返し一人でそこへ向かう。
 階段を降り切って、近道とばかりに琥太郎は保健室へと入った。
「せんせー、すんません窓借りまーす」
 はいはーい、と保険医は突然の訪問にも気をよく返す。彼は風紀委員の協力者なのだ。
 その窓から飛び出せば、あっとゆー間に校舎裏だ。


prev next


top

main

bkm
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -