挨拶終わって
 生徒会と風紀の紹介が終わり壇上から降りる。琥太郎は無事終わったと一つ長い息を吐いた。
「コタぁ……」
「え、なになに? 俺イケメンだった? 青風惚れた?」
「暢気すぎる……」
 きゃっきゃとはしゃぐようなその雰囲気に青風はため息をついた。自分が何をいったのか、こいつは覚えていないのかと。
 壇上で聞いていた青風もまた、俺と話せ発言に瞬間的に驚いた一人でもあったのだ。そしてそれは副会長の佐和もだ。
 佐和は琥太郎が蓮永久の探し人だという事を知っている。なぜなら彼もまた、蓮永久の率いているチームのメンバーだからだ。
 だが、永久に琥太郎がそうであることは教えていない。教えない方が面白いからである。
「青風、後でゆっくり教えてあげなよ」
「あー、そうだな……ばーか。ばかばか、コタのばーか」
「バカって言った方がバカなんだぜ、青風」
 きりっと言い放つ琥太郎。その肩をぽんと叩く手があった。
 それは庶務の芳次雅哉だ。そしてぐっと親指たてる。その表情は嬉しいとにやにやするのを堪えているのに必死な様子だ。
「まさやん、何?」
「もえさんくー」
「えっ」
 もえ。つまり萌え。雅哉の口からそれが出るときは、大抵自分がポカをやった時だ。
「な、なに? 何か俺やっちゃった!?」
「あとで説明してやるよ……」
 青風の言葉に、今すぐと琥太郎は迫ろうとしたのだが、そうは行かなかった。
「おい、周防」
「え? ぎゃっ!」
「人の顔みてなんだそれは、あ?」
「あ、すまん。ちょっとびっくりして、あははは……」
 声をかけられるなんて思っていなかった。蓮永久からのそれに、琥太郎はびびりまくったのであった。
 取り繕って何か用かと言えば彼は口の端あげて笑う。
「人の親衛隊に口だすなっつーんだよ」
「えー? あ、あああああああああ、そういう、ことか……!」
 永久から投げられた言葉。それで先ほどからバカだのもえさんくーなど言われていたことを理解した。そういうことだよな!? とばかりに視線を向ければ青風も佐和も、雅哉も頷いた。
 何故、何故気づかなかった。何故あんな場所であんなことを言った。
「……うあー……あー……すまん、取り乱した。でも、な? お前んとこ荒れ放題だろ」
「あれはあれでいいんだよ」
 いや、よくねーよ。
 そう心の中でそれぞれ思うほどに永久の親衛隊は荒れている。恐ろしいほどに。
「……じゃあ、俺がしょっぴいても文句言うなよ」
「俺には関係ない」
 その態度がダメなんだ、と思ったが口を閉じる。何を言ってもきっと、聞く耳を今は持たないだろうからだ。
「酷い状態続けば、風紀は遠慮しねーからな」
 その言葉にはっと吐き捨てるように笑っていく。この俺様は、と琥太郎は半眼で見た。けれどそれを気にもせず、永久はこの場を離れて行く。
「……おうふ、気づいてねーな、よーし」
「会長気づけばいいのに。どえす会長×へたれ風紀委員長はすはす」
「ほわほわ副会長×へたれ風紀委員長ならいつでもやったげるよ」
「おかん副風紀委員長×へたれ風紀委員長も可能」
「まじでか。よろしくたのむ」
 ふざけんな、と琥太郎が声を上げる。それを三人は笑って交わした。
 いつもどおりのおふざけ、お遊び。本気かどうかは誰にもわからない。


prev next


top

main

bkm
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -