嫌い、の真意
 ざわついたのは、壇上に共にいた生徒会役員も同じだ。
 友人である佐和はどうしたのか、と瞳を瞬くほどに。雅哉もまた驚いており、ふと佐和と視線を合わせていた。
 けれど、まだ琥太郎の話は終わってはいなかった。
「嫌い、というのは全てではない。俺は自分の親衛隊が好きだ。時陽先輩の親衛隊も、ここにいる青風の親衛隊も。副会長の佐和の親衛隊、他にも好きな親衛隊はある」
 その言葉にほっとした空気が講堂内に落ちる。彼というものを知る人間はなんとなく、その先を予想できた。
「俺が嫌いだというのは、その気持ちの押し付けを前面に押し出し、他者への迷惑をかけることをなんとも思っていない人たちのことだ。少し、考えてほしい。俺はその好き、助けたい、守りたいという意志は尊重したい」
 けれどやりすぎは良くないと琥太郎は言う。その言葉に心当たりあるものはそっと視線を逸らした。
「でも、親衛隊に所属している人だけで、いい関係つくろうなんて無理だ。親衛隊持ちの人も先入観に縛られないでほしい。そんなわけでー、俺はしばらく親衛隊持ちの人の所を巡る。逃げるな、俺と話をしろ」
 その言葉は強い。やるといったらやるのだと思わせる。
 常々、琥太郎は統制の取れている親衛隊以外が気になって気になって、たまらなかったのだ。
 彼等が暴走するのは、彼等の守りたいと思う相手に拒絶されているからだと思う。自分だって最初はよくわからず、引いていた。けれどそうあると、彼等も不安になり迷走するのだと関わっていてわかったのだ。
 きっと、他の人もそうなのだと思う。
「以上だ。この全員が居る場でないと話せないことだったので長くなって申し訳ない。聞いてくれてありがとう」
 そう締めて、琥太郎はほわりと笑みを向けた。
 その様子を視ていた彼を知るものたちは思ったのだ。
 あの、バカと。
 へらり、ほわほわ。ふにゃふにゃ。普段の彼はそんな感じといってもいい。けれど、笑顔を浮かべた時はとても綺麗なのだ。
 それは人をひきつけてやまないもの。
「てか、コタちゃん墓穴掘ってねぇ?」
 そんな様子を苦笑交じりに視ていた隠乃時陽は隣にいた男に何が、という。
 彼は時陽の幼馴染であり最もお互いを理解しあっている間柄だ。名を久下奏太(くげかなた)。受験時代、琥太郎を一番しごいた人でもあった。
「いや、だって。統制の取れてない親衛隊持ちは俺と話をしろ、逃げるなだぜ。むしろお前が逃げとけじゃね?」
「……あー……」
 本当に、あのバカと時陽は笑う。逃げている相手に自分から近づくといっているのだから。
 この学園でもっとも忌避される親衛隊は会長である蓮永久の親衛隊だからだ。


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