ドキドキ挨拶タイム
 役員紹介が始まる。これ必要ないんじゃないかな、と琥太郎は思っているのだが長年続いているといわれたらもうどうしようもない。
「生徒会長、蓮永久だ。皆が良い時間を送れるよう尽力する。宜しく頼む」
 蓮永久の挨拶は簡潔だった。それは入学式、始業式を含め挨拶をもう長々としたからだろう。
 その次に副会長、会計、書記、庶務と続く。
「生徒会副会長を務めさせていただきます、明和佐和(めいわさわ)です。至らぬところがあると思いますがよろしくお願いします」
 副会長の明和佐和は琥太郎のクラスメイトでもあった。そして編入し元から知り合っていた者達とは別に始めてできた友人でもあった。
 おっとりとした美人と見えて、佐和はしっかりものでもあった。あと怒らせると怖いということも勉強済みな仲だ。
 笑顔の穏やかな和風美人。そんな印象だと琥太郎は思う。
「会計の伊沢慶斗(いさわけいと)です、よろしくお願いしますー」
「同じく、伊沢戒斗(いさわかいと)、よろしく」
 会計は双子。顔と姿は同じでも二人は表情が違う。ほわほわの慶斗ときりっとした戒斗。時々お互いを入れ替えて遊んでいるようだがボロがでるのは早い。
 次の書記はにこっと人懐こい笑顔を浮かべる。書記の名は各務社(かがみやしろ)という。
「各務社、よろしくねー、にゃんこちゃんたちー」
 へらりと笑って送る挨拶は非常に自由だった。その言葉にきゃーと声が上がる。へらへらちゃらちゃらした雰囲気の彼はとっつきやすく、とっつきにくく。
 庶務の挨拶もまた簡単に、すぐ終わる。
 芳次雅哉(よしつぐまさや)という名を告げ、短くよろしくと。体格もよく、表情崩さない彼は鉄化面とも言われているがそうではないことを琥太郎は知っている。彼もまた友人であるのだが、その腹の内が多少理解できない分野に特化しているのだ。きっと今も、脳内は楽しい事でいっぱいなんだろうと琥太郎は思う。
 そして一通り、名乗ったところで会長である永久が前へと出た。
「補佐については、現状特に必要はなかったので決めてはいない。だが一年の中より、一学期の終わりに選出することとした。それは次年度など生徒会の活動を引き継ぐに当たって必要な人員を確保するためでもある。この学園の運営に関わりたい、自らにその能力があると思うもの。また、この相手なら託しても良いと思える者があれば自薦他薦問わず、生徒会へと名乗り出てほしい」
 そこまで言って、永久はくるりと講堂を見回し、話を続けた。
「ただし、ただ生徒会役員と関わりたいというだけのものにはこの任はない。以上だ」
 下心があるものは、ということだろう。それは最もなことだと、まともなものならば思うことだ。
 そして生徒会役員の紹介が終わり、彼等と対となる風紀委員の紹介となる。
 それは代表して委員長と副委員長だけだ。
「あっー、あー……どーも、風紀委員長を引きついた周防琥太郎です。こっちは副委員長の……水門青風です」
 壇上に立って琥太郎は青風も紹介する。彼は最初から話すつもりがないため、ここでの話はすべて任されていた。
「えーっと……俺……あ、ちげぇ。まぁいいか」
 もうどうとでもなれ、そんな風に琥太郎は笑った。ほにゃっと崩れた表情に一部が色めき立つがそれは一瞬のこと。きりっと表情引き締めた彼は、上に立つものの顔であった。
「俺は風紀委員を隠乃時陽より引き継いだ。俺は彼の意思をまた引き継いでいることを忘れないでほしい」
 そして、琥太郎は笑みを浮かべ、言葉を落とす。
「俺は親衛隊が嫌いだ」
 それは爆弾。風紀委員長が親衛隊という存在を嫌っていると公言したのだから。
 自分もまた親衛隊を持ち、仲良くしているはずの彼がだ。


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