そして入学
「桜舞ってるー、どうしよう俺高校生ー」
「よー、コッタちゃーん」
「ちゃんつけんな!」
 無事に編入試験を潜り抜けた周防琥太郎は知らない。その試験が超難関であることを。
 けれど、此処にこれたのは皆のおかげだとはわかっていた。
 入学式前、学園の正門にて待つと連絡を受けた周防琥太郎はそこで仲間達からの熱烈な歓迎を受け、そこでありがとうと笑う。
 そんな彼へと有無を言わさず、あるものが渡された。
「え、なにこれ腕章? ふうき?」
「それ、入学祝な。あとこれも」
「えー?」
 腕章のあとに投げられたのはコーヒー牛乳のパックだ。それをさんきゅ、と周防琥太郎はキャッチする。パックにすぐさまストローさしてちゅーと飲むそれはお気に入りだ。
 それを飲みながら隠乃時陽より風紀委員会所属だと伝えられた。それはもう入学する前から勝手に決められていたこと。風紀委員会のメンツは大体、知り合いばかりだという。
 まぁいいか、と周防琥太郎は受け入れた。だがすぐ、爆弾落とされたのだ。
「そうそう。お前のこと追っかけてた総長いるだろ」
「ああ、いたいた。紅蓮サンだっけ。赤い人」
「あれ、うちの学園にいるから」
「ブッ!!!!」
「あ、ちょ、きたねー!」
「は、なん、ん!?」
 焦った。周防琥太郎はとにもかくにも焦った。コーヒー牛乳垂れた口端拭いながら焦った。
 紅蓮サン。
 それは夜の街に出て、金獅子と出会ってしばらくしてからであった男だ。
 自分を気に入ったと言って何かとうちにこいと言いながらべたべたとおさわりを繰り出してきた男。受験勉強を始めてからは出会っていない。
 それは周防琥太郎にとってよろしくない思い出だ。
「でもまー、大丈夫じゃねー。お前、にょきにょき伸びたし、髪色も違うし」
「ええええ……」
 隠乃時陽はダイジョーブダイジョーブと軽く言う。けれどそれは信用ならないものだと周防琥太郎はよく知っていた。
 とりあえず、見かけたら逃げようと心に固く決め彼の学園生活は始まった。
 始まって、今までとのギャップに白目になりながら頑張った。


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