出会い、のち勉強
「きーんーじーしー」
「あ、チビ」
「チビっつーな馬鹿獅子」
 周防琥太郎と隠乃時陽は殴りあってすぐ、意気投合した。
 周防琥太郎自身、夜の街に繰り出し始めたのが最近。友人と呼べる者はまだいなかった。けれど、喧嘩という一連をもって隠乃時陽と友人と言える間柄へと一気になったのだ。それと同時に、隠乃時陽のチームに溶け込んだ。
 チームに入ったわけではない、ただそこを遊び場としただけだが。
「なー、どーやったらそんなに身長伸びるん?」
「あー? 食って寝てたら伸びた」
「……くそ、伸びろ俺の身長。そして縮め金獅子」
 周防琥太郎は毎夜の如く遊びに来た。
 そこは楽しい場所であったからだ。時折抗争にも混ざりはしゃいだ。その中で敵とする者とめぐり合ったり、少し危ない事もあったり。
 そうしているうちに、金獅子のチームの主要メンバーがある学園の者であることを知ったのだ。
 期末が近いから今日は勉強、とか。不良のはずなのに変なところで律儀な面々。連帯感が強く、友情に熱い。カップ麺が好きなどなど。
 そして、彼らが自分の一歳上であることも。
「なぁ、お前らって全員が同じ学校? なんだよな」
「あー、まぁそだな」
 ふと、参考書を見る金獅子に投げかければ視線はそのままで生返事。
 そんな様子にいいなぁと周防琥太郎は零す。
「そっかー。じゃあ俺もそこ受けるかなー。来年受験生なんだけどさ」
「は?」
 その言葉で隠乃時陽は、金獅子は、そのチームの者達は周防琥太郎が自分達より一つ下なのだと知った。
 正直、三つは離れていると思っていたのでチビが夜の街うろうろしてんじゃねーよと保護していたくらいの気持ちだった。その言葉をそこで聞いた者達は一様にウソだろ、というような表情をしていたという。
「で、どこの学校?」
「隠乃宮……」
「……あれそこ、金持ち男子校? えっ、やだ」
 そんなの青春できないじゃん。
 そう周防琥太郎は零した。けれど、そうは言いはすれど知り合った友人たちと近くにいたほうが楽しいかという結論に至った。
 だが、だがここに大きな問題があったのだ。
「おい、おいおいおい。なんでお前、4×2が4になってんだよ」
「あっ」
「イイクニ作ろう」
「かまぼこばくふ」
「…………お前等、こいつを矯正するぞ」
 その時の皆の顔を、周防琥太郎は忘れない。
 周防琥太郎は究極のおバカであったのだ。それゆえに、隠乃時陽のチームはその日から暴れるのをやめた。
 いくら不良、夜遊びに出ているといっても彼らはちゃんと勉学に勤めており学力はあった。
 これより周防琥太郎学力向上委員会と化した彼らは毎夜、彼に勉強を叩き込んだ。小学校一年レベルからだ。
 一年という時間は周防琥太郎の学力をあっという間に向上させた。
 教えた者達もまた学園のトップクラスの者たちばかり。そして周防琥太郎も、学べばちゃんとできる子だった。人並み以上に。
 そして、周防琥太郎は無事に隠乃宮学園へと高校より編入できたのであった。
 さらに――周防琥太郎はこの間に身長を伸ばしていたのだ。155センチから169センチへと。
 そしてあと1センチが憎くてたまらなくなった。


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