「あー……あとはお前次第だぞ」
臣が行ってしばらく。コウが声を発し去っていく。
そうなるともう、ここにはトーゴと俺しかいない。なんだか気まずいようなよくわからない空気だ。
俺は一歩、踏み出した。
「トーゴ、俺……」
何から言うべきなんだろうか。
俺はトーゴのいうねこだってことは?
好きってことは言った。
それよりも、トーゴの気持ちを知りたい。
色々考えているとトーゴが目の前にきていた。
そして何かを言うよりも先に、言われるよりも先に俺を抱きしめる。
「……ねこ?」
「!」
その感覚にやっぱり覚えがあったのだろうか。
もう一度、どうなのかというように聞いてきた。
俺は見上げて、こくりとひとつうなずいた。その声に、トーゴは満足したように笑みを向ける。
「ねこ、せっき」
「そう、どっちも俺」
前髪、結んでくれたというと覚えているというように頷かれた。
「このまえは、猫が俺ってわからなかった。だから違うっていった、ごめん」
するりと口から流れる。
俺はこんな風にいつも、しゃべっていただろうか。
素直だっただろうか。
多分、トーゴの前だからだ。
「トーゴ。俺は、ちゃんとあんたの世界の中にいる?」
「いる」
そういって、トーゴは俺の額にキス一つくれた。
別に俺は壊れものでもなんでもないけど、優しかった。
「せっき、揺るがない」
揺るがない?
何がだろう。俺が揺るがない。
それはトーゴの中でってことだろうか。
「トーゴの中で、俺は揺るがない、ってこと」
聞けばそう、と頷いた。
そうか、聞けばトーゴは答えてくれる。だからわかるようになるまで聞けばいいだけだ。
「そっか……そっか……」
あったかい気持ちが、俺の中にあふれる。
こんなのは、トーゴに会うまでなかったものだ。
最初は嫌い、それでもいいと思ってた。けれど思われるなら、想われるなら好きのほうがやっぱりいい。
そして幸せなことに、トーゴの心はそちら側へ傾いてくれたのだ。
俺の気持ちの在処は自分にと、トーゴにある。
とても、幸せ。
「トーゴ、ありがとう」
俺と出会ってくれて。
拾ってくれて、気持ちを向けてくれて。
その想いすべて込めて、微笑んだ。
俺のわがままだったのだけれども。
運がよかった、というのかもしれないけれども。
隣に好きな人がいてくれているのはどんな幸運だろうか。
今感じている気持ちが、俺のホントだ。
ウソじゃない。最初はウソでもキライと思おうかと思っていたのだけれども。
それは到底無理なことだったのだと、気持ちを伝えた今では思う。
好きしかなかった。
―了―