06-3
「刹生」
「臣、ごめん。ごめんしか言えない。もしかしたらそう言っちゃだめなのかもしれないけど……ごめん」
 これは俺のわがまま。臣を傷つけていることはわかってる。
 それでも俺はトーゴがいい。
 トーゴが俺の事をどう思っていても、もし臣と決着つけた後、俺の事をみなくても。
 俺はトーゴがいい。
 トーゴが好きだ。
 その気持ちを持っていたい、守っていたい。
「臣、俺は」
「もういい」
 臣は俺から視線を逸らした。視線を合わせない、そらすということはよくあった。
 けれど、これはいつものとは違う。
 投げやりに、そらされたような感じだった。
「俺のものになる余地はもうねぇってことだろ」
 臣はそういって、トーゴを睨む。
「気がそれた。もうやらねぇ」
 それだけ言って俺の方へ来る。
 じっと視線は俺のほう。そして目の前で立ち止まった。
「今までとは違うんだな」
 逃げて、捕まえてももう戻ってこない。そういう意味なんだと感じて頷いた。
 舌打ちひとつと一緒に、そうかと臣は落とす。
「あれのどこが、いいんだ」
「え?」
「あれに、囲われてたんだろ」
「あ……」
 もうはぐらかす意味もない。そうだと答えればやっぱりなと臣は言う。
 わかっていたのだろう。
 それで俺が言わないから、何か思う事がいろいろあったのかもしれない。
 けれどそれはもう、聞けないことだ。
「臣、俺はやっぱり……どうあってもお前は幼馴染なんだよ」
「それで?」
「それ以上にも、それ以下にもならない」
 だからごめんという。
 臣はもう理解しているのだと、思う。俺の気持ちはどうあってもこうあるということを。
「……よく知ってる」
 お前がそうなったらテコでも動かないこと。
 そういって臣は笑った。
 少し悲しげなような、そんな表情。
 それだけ俺の元において行ってしまった。


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