06.気持ちの在処
「よくわかんない」
 ごろん、とベッドの上で転がる。
 体調もだいぶ良くなっている。けど、怠惰に過ごしたくてだらだらと過ごしていた。
 無駄な時間は俺に考える時間をくれる。
 雑に、勢いだけで考えた事。
 それは色々ねじ曲がって今につながっているんだと思う。
 俺は本当に、どうしたいんだろうか。
 ため息しか、漏れない。
 自分の事も、トーゴの事も。臣の事も。
 よくわからない。
 でも今の状態が長く続かないことはわかる。
 コウもそう言っていた。トーゴは気が長い方ではない。そのうちシンキとなんらかの決着をつけるだろうって。
 それはどんな決着のつけ方? 何の決着?
 トーゴの中での決着が、つくだけだろうが。
 そうなったら、俺とトーゴのつながりは? なくなってしまうのだろうか。
 ぞっとした。
 トーゴの世界に映りたくて、入りたくてこうしているのに。
「最悪……っ、ぅあ」
 意味もなく涙が流れた。
 次にトーゴとつながりが切れたらもう、何もできなくなる気がする。
 三度目はない。
 そんな、気がする。
 俺はどうやって繋ぎ止めればいいんだろうか。
「……あれ」
 少し落ち着く。こつんこつんと、さっきから何か音が聞こえる。
 なんだろうと思って身を起こした。
 普通ならこんなの、気にもならない気にとめない。
 けど、体を起こして正解だった。
 窓。
 窓の外だ。
 窓のそばには樹がある。そこにトーゴがいたのだ。
 柔らかに笑みを浮かべて。
「え、なんで……」
 窓を開ける。すると靴を脱いでこっちへ抛り投げてきた。
 まさか、飛んでくるつもりか。確かにそれは可能だけれど。
 俺は窓をあけて少し下がる。
 すると勢いつけてトーゴが部屋の中に入ってきた。少しバランス崩しながらも踏み止まって、俺を見てまた笑む。
 近くに来て、俺をぽすっと腕の中に捕まえた。
「あつい」
 そして呟いて俺をベッドに転がす。なに、と思えば額に掌がのった。
 冷たくて、気持ちい。
 ああそっか。あついっていうのは、俺の体がってこと?
「寝る」
 ぽんぽん、と身体叩かれて、その掌で瞳隠された。
 落ち着く、優しい。
 何もお互いしゃべらないけど、穏やかだ。これは嫌ではない。
 彼に拾って助けてもらった。あの時みたいな、感じがする。
 幸せ。
 そう思ってくふりと喉がなった。
 うぬぼれていいだろうか。こうして来てくれた。
 これってトーゴは俺を俺としてみて、そして受け入れてくれてるからだと思って、いいだろうか。
「とーご、好き」
 知らず漏れた声。ひくりと一瞬、その指が反応したのを感じた。
 言っては、まずかっただろうか。
 彼に視界覆われているからわからない。
「すき」
 トーゴが反芻する。
 それは俺もだといっているのか。それとも繰り返して、理解しようとしているのか。
 どちらかは俺にはわからない。
「誰より好き。俺、とーごがいないとダメだぁ……」
 こうして、伝える事は思ったよりも簡単だった。
 けれど、この先は何も見えない。まっくら、なんだ。
「せっき」
 優しく、呼ばれた。
 それと同時に瞳の上の手が離れた。逆に、今度はトーゴの顔が近づいてくる。
 ぺろと、目元舐められた。
 そして離れていく。
 トーゴは俺から離れた。
 そのまま背中向けて出ていく。
 それを追いかける事は何故だかできなくて。
 そして、それから乱暴に扉があく音が聞こえるまで俺は眠いっていたらしい。


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