加州side



「ふわあ」


と、欠伸を一つして、一週間前から春の景趣なった我が本丸を意味もなく見つめる。今日は出陣も遠征も内番すら休み。こういう時はネイルとかお買い物とかして楽しんじゃうんだけど、生憎三日前に主から貰ったお小遣いは使い果たした。...暇。何か面白いことないかなあって思いながら、俺がごろんと縁側に寝っ転がったその時だった。


『あの、この人参は、ど、どう?』
「ん〜〜、見た感じまだ収穫すべきではないね」
「なまえ、ほら、こっちの人参なんか立派な葉だよ。」
『あ、じゃあ、そ、それ...。ありがとう、...蜂須賀さん。』


と、畑の方から声が聞こえてきた。倒した体をむくりと起こして、そう離れていない畑の方に近寄りながら「おーい、何やってんの?」と声をかけると、そこに居たなまえ、歌仙、蜂須賀の視線が俺に集まる。うーん、珍しい組み合わせだ。


「なまえが僕に料理を教わりたいらしくてね。折角だから材料から拘ってるって訳だよ。」
「そして俺は味見係。贋作には務まらない大事な役職さ。」
「へーー、そうなんだ。 ねえなまえ、料理、誰に作るの? 主?」
『主にも、だけど...』


舞い降りた楽しそうな事に緩む頬を抑えきれないまま、俺はなまえの目線に合うように膝をおった。主とか一期一振に振る舞うつもりなんだろうなあ。健気だなあ。かわいい。暇だし仲間に入れてほしいな。そう言うと、なまえはすこし困ったように視線を泳がせた。...えっ、何その反応! 嫌!?嫌ってことなの!?え、えー、俺めっちゃ傷つくんだけど...!!


『主もだけど、...一兄と...あと、清光にも、つ、作る予定だから...』


えっ俺も?


『だから、あの、か、完成するまで...待ってて...?』


恥ずかしそうに顔を赤らめて見上げてくるなまえにラブドッきゅんだよ。今自分でもびっくりするくらいときめいてる。史上最高のときめきだよ。このときめきは新しいマニキュアが届いた時よりも凄い。


「あーあ、せっかくなまえがサプライズしようとしていたのに」
「君は全くもって空気が読めないね」
「うっうるさいから黙って。...ええっと、なまえ、ありがとう。作るメニューは聞かないでおくね。楽しみにしてる。」
『う、うん...!』


そう言って畑を後にする三人の後ろ姿を見届けた後、俺は縁側に戻って寝そべった。あーー、また暇になっちゃったな。なまえが料理作ってくれるっていう楽しみは出来たけど、今やることがない。ええっと、今日暇そうなやついるかな。安定は出陣してるし、堀川と和泉守は遠征。粟田口の短刀達は演練と内番。長谷部は今日は近侍だしなあ。マジで暇〜。と、無意味に廊下でゴロゴロしていると、陸奥守が通りかかった。


「お、加州やか。何してるが?」
「暇してる〜〜。」
「わしのおすすめの漫画かしちゃおーか?」
「どうせバトル漫画とかでしょ? 俺少女漫画しか読まないから」
「なにをいっちょるがか! 男ならバトル漫画一択ぜよ!」
「戦を普段してるからいーの。 それより、陸奥守は何してるの?」


陸奥守はすこし焦ったように「あ!そうじゃ、なまえに呼ばれちょった!」と、走り去っていった。え、え〜〜なまえってば陸奥守に協力してもらってんの!? 絶対料理とか出来ない人じゃん!なんで協力を煽ったの!

...歌仙と、陸奥守、味見係で蜂須賀.....、なに、作ってんだろ...。



***



厨房を、覗きに来てしまった。あーーごめんなまえ!!自分からメニューは聞かないでおくねとか言っておきながら好奇心に負けた!!!



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