・粟田口服を着る短刀主に萌えるロイヤル

乱side


「か、かわいい‥‥!!!」


そう言って赤く染まった頬を緩ませる一兄を見て、思わず僕の顔が綻ぶのが分かった。
事の発端はそんな僕の隣に居るなまえちゃんの服の裾が破けている事。丁度困った所に居合わせた僕が、なまえちゃんの服を光忠さんに渡し、僕と前田の部屋に連れて行って余っていた予備の粟田口衣装をなまえちゃんに貸したんだよね。因みに僕の服は嫌がったのでの前田のを。
無駄に帽子もマントも予備があった前田の服はなまえちゃんに良く似合っていて、思わず頬を上気させながら僕が「かわいい」と言おうとした丁度その時。一兄がガラリと音を立てて、襖を開いた。そして僕となまえちゃんが何か反応をする前に冒頭に至る。


「だよね! 似合ってるよね!」
「最高です!」
『え、え‥‥? そんなに、?』


僕と一兄を交互に見つめた後、戸惑うように呟かれた言葉に僕は大きく頷いた。普段、煌びやかな和服を着こなすなまえちゃんが、短パンなんて履いたらギャップでかわいすぎるよね。自覚して!


「うーん、でもこうなったら僕の服も着て欲しいなあ」


思わず、というように僕の口から出た言葉に、なまえちゃんが大袈裟に肩を揺らした。そんななまえちゃんと対照的に、一兄は「いいですね絶対に似合いますようんたらかんたら」と身を乗り出して瞳をキラキラさせている。


『ま、待って、俺、流石にス、スカートは‥‥』


ふふん、その言葉を待っていた!


「じゃあ、スカートじゃなかったらいいよね!」


得意げに口を開いた僕に戸惑っているなまえちゃん。そんな彼に見せつけるように大袈裟に振りを付けて僕の押入れを開ければ、改造して沢山の服が入るようにしたもらった空間が広がった。その空間を余すことなくギッシリと詰められた服を一瞥して、僕はスカートでは無いものを数着取り出した。


「警察官、お医者さん、執事服‥‥えへ、これは、スカートじゃないよ?」
『‥‥! え、あ、あの‥‥!』
「なまえくん絶対に似合いますお願いします着て下さい」
『い‥‥一兄‥‥』


ノンブレスの一兄の言葉に若干引きながらなまえちゃんが流された所で、僕はガッツポーズをした。


***



「かわいい!」
「似合ってます!」
「くっ‥‥なまえくんにならば逮捕されても構いません‥‥!!」
「かわいいかわいいかわいすぎます!!!」
「天使か!!!!!!!」
「ああ‥‥なまえくんを顕現したくださった主殿に感謝致します‥‥!」


着替え中の一兄の荒ぶりが尋常じゃなかった事に若干引きつつ、僕も同意見だったので何も言えない。何か言うとすればなまえちゃんマジエンジェルってことだね。


『‥‥つ、疲れた』
「アハハ、流石に数十着も着替えればそうなるよね」
「どれも似合ってましたよ」


二十三着目の猫の着ぐるみを着たなまえちゃんがググ〜っと伸びをして畳に寝転んだ。この着ぐるみの魅力はしっかり尻尾が付けてあることなんだよねえ。揺れるととっても可愛い。


『そういえば、‥‥なんで一兄は乱ちゃんと前田くんの部屋に来たの』
「あっ、本当だ。なになに? なんか用事?」
「そうだ‥‥ん? えーっと、何でしたかなあ」
「えっ、嘘! 普通忘れる? まさか年なの?」
『み、乱ちゃん‥‥!?』


寝転んでいたなまえちゃんが僕の暴言に顔を青くして慌てて身を起こす。僕が軽く「ごめーん」と謝ったけど、元々一兄は気にしてなかった様子。それより忘れた事の方が気になるみたいで、「何でしたっけ」と頭を抱えている。


「もしかして、忘れた事って、俺っちに乱を呼んできてほしいって言われた事じゃねえか?」


不意に僕の部屋に響いた威圧的な声に「そうそう!薬研に乱を‥‥薬研!?」と一兄が顔を青くする。声の方に視線を移せばそこには内番着の薬研が仁王立ちで立っている。


「一兄‥‥頼んでから何分経ったと思ってるんだ‥‥?お陰で俺っち、馬当番を一人でこなしちまったじゃねえか‥‥」
「うわあ、すみません薬研!!つい!!!つい夢中になってしまって!!!!」
「あ、僕馬当番だったっけ! 薬研ごっめーん!」
「お前はもうちょっと反省しろ! 大体、一兄は何に夢中に‥‥‥って、なまえ?」
『や、薬研さん』


怒っていた薬研が、なまえちゃんの姿を捉えた。猫の着ぐるみを着たなまえちゃんは、薬研の怒った様子に少し恐怖を抱いたようで若干涙目になっている。‥うん、天使通り越してもう天だよ。なまえちゃんは天の使いなんかじゃない。天そのものだったんだよ。ごめん僕何言ってんだろう。

僕が自分の思考回路に突っ込みを入れたその時、薬研が顔を赤らめて噛みしめるように一言。


「俺っち猫派だから‥‥!!!」
『エッ』


そう言って薬研はなまえちゃんの頭をひと撫でして走り去っていった。気持ち分かるよ。可愛いもんね。なまえちゃんの可愛さが僕と一兄の危機を救ったよ。ありがとうなまえちゃん。

めでたしめでたし。



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雪猫様リクエストありがとうございました!
一兄が思ったより悶えましたが、楽しく書けました。因みに乱ちゃんは翌日畑当番を一人でさせられて、一兄は好きなおかずを薬研に盗られました(^ ^)



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