・短刀主と短刀達がほのぼのするの見守る審神者と保護者。

(審神者side)



「平和だなあ」


と、一期一振が入れたくれたお茶をグイッと一杯飲んでから飛び出した言葉に、長谷部が深く頷いた。いつも賑やかな本丸は本日だけ休業。最近大阪城攻略の為に皆には頑張ってもらったから、急遽“お昼寝の時間”を作ってみたら、大成功。昼は手合わせしてえんだけど、なんて文句を言っていた同田貫だってぐっすりだ。同田貫も大阪城攻略に貢献してもらっていたから疲労が溜まっていたんだろうなと申し訳なく思いつつ、意外と可愛い寝顔をバッチリ脳に焼き付けておきました。てへぺろ。

そんなこんなで静かな本丸。起きているのは俺と長谷部と一期一振のみ。長谷部は俺が起きているなら自分も起きているとの事で、一期一振はただ単に眠れないそうだ。まあ、無理に寝かすのも可哀想だろう。左に正座している長谷部。右に上品に足を組んている一期一振を座らせ、三人で景趣を楽しむ。お気に入りの秋の景趣。美しい紅葉を目で楽しんでいると、不意に背後の襖が開いた。


「おや、なまえくん。どうしました?」


真っ先に声をかける反応の早い一期一振に長谷部が若干引いているのに少し笑った。


『え、あ、その。眠れなくて...一兄達も、眠れないの?』
「ええ。私は昨日ぐっすり眠れましたから」
「俺は主が起きているならば」
「...ってな感じの二人とのんびり中」


なまえも来る?と膝をポンポンしながら発言しようと思ったが、また襖が開いた事によって言えなかった。襖の方に視線を向けると、今剣、小夜、愛染の姿が。


「おーおー、どうした? 短刀ちゃん達眠くないの?」
「ぜんぜんねむくありません!めをつむったらねむれるといった岩融はうそつきです!」
「俺は蛍の寝相で起こされて目が冴えちゃって」
「...お腹が減ったから、柿でも食べようかなって...」


それぞれの理由に成程、と納得する。短刀達にとっていつもならこの時間は、鬼ごっことかして遊んで、おやつを食べる時間帯。今剣が遊び足りなくて眠れないのも、小夜が小腹が空くのも分かる。

そして蛍丸の寝相の悪さはこの本丸一。前、蛍丸を起こそうとした愛染が寝返りついでのパンチをくらって中傷になった事があるのを俺は忘れない。絶対に俺は寝ている蛍丸に近づかない。


「じゃあ、四人で遊んできてはどうですか?その間に柿を取っておいてあげるから、遊び終わったら剥いてあげましょう。」
『えっ』
「...ありがとう」
「じゃあ泥団子作りでもしようぜ!」
「さんせいです!」


一瞬、俺も?と焦ったような表情を浮かべていたなまえだが、盛り上がる三人の勢いに押されて困惑しながらも三人について行く。二人がかりで水を汲みに行く今剣と愛染。スコップで地面を掘る小夜となまえ。運んだ水を掘った地面に流し、泥を作った三人が、楽しそうに泥団子を作る。その様子を困惑しながら真似るなまえに癒されつつ、何で泥団子?と俺が首を傾げていると、短刀の遊び事情に詳しい一期一振が口を開いた。


「泥団子を作る感覚が、刀装を作っている時の感覚に似ていると乱が言っていました」
「ほう」
「そうなんだ?」
「だから、短刀達の間で刀装作りの練習として泥団子作りが流行っている様ですよ」


短刀達が甲斐甲斐しすぎて泣きそう。
色的に失敗してる刀装じゃん、ってクソみたいな考えが脳裏をよぎった俺を誰か殴って。


「ぼくはこんなおおきなどろだんごをつくりますよ!」
「大きいね...僕は質を大事にする」
「今日調子悪いかも...なまえはどうだ?」
『えっ...あ、あの』


咄嗟に隠すなまえだが、練度の高い古株短刀達の目は誤魔化せなかったようで。


「え、これって...」
「泥団子っていうか、...うん...泥だな」
「なまえ、ぶきようですね!」

今剣の悪気の無い素直な言葉にガーンと顔を青くするなまえ。しかし、「でも一週回って芸術性を感じるよ...」と言う小夜の言葉を聞いた瞬間ぽっと赤く頬を染めてはにかむ。無口だけど表情は豊かななまえマジでエンジェル。


俺がなまえを見てほのぼのしていると、隣に座っていた一期一振が不意に立ち上がった。反射的に一期一振の事を見ると、なまえ達を見て何かを堪えるように顔を手で覆いながら、噛み締めるように言葉を紡いた。


「そろそろ柿でも取ってきますね...!」
「ああ.....うん」
「...主の分も忘れるな」


俺達の言葉を聞くなり、全速力で走り去った一期一振。遠くから「可愛すぎるんですよおおおぉぉ...」と一期一振の声が耳に入ったけど聞こえない聞こえない。今日も一期一振は絶好調である。


『あれ、一兄は...』
「ああ、柿を取りに行ったぞ」


そんな時。どうやら泥団子を作り終えたらしい短刀ちゃん達がこちらに駆け寄ってきた。一期一振が居ないのを気にしたなまえに長谷部が嫉妬しているのか若干眉を顰めながら言葉を返すと、今剣が「じゃあ主と長谷部でもいいです」と妥協してあげた見たいな表情を作って、泥団子をこちら側にぐいっと差し出す。

その今剣の行動に習って、小夜、愛染、そしてなまえがおずおずと泥団子を差し出す。今剣のどでかい泥団子。小夜のピカピカの泥団子。愛染の少し形の崩れた泥団子。なまえの泥。差し出された四つの泥団子を前に、長谷部がぴしりと固まるのが分かった。そんな長谷部の様子に本当に長谷部って子供に慣れてないなあ、と微笑ましく思いながら、俺は1番指に泥が付着する可能性が低そうな小夜の泥団子を手に取った。そして口の周辺まで持ってきて、噛み付いて咀嚼する振りを数回。


「んん〜〜、美味しい!」


まるでなんらかの食品のCM見たいな爽やかな笑顔でフィニッシュ。泥団子を団子に見立てて食べてあげると子供は喜ぶゾ...!長谷部にそう念を送りながら、ドヤ顔で短刀ちゃん達の様子を伺うと。


「...何をやってるの」
「主?」
「ふかかいなげんどうですね!」
『...?』


えーーー!!違うんだ!!!?
と、内心冷や汗をダラダラと流しながら叫んだ。


「主はやっぱりだめでしたね。長谷部でだきょうします!」
「!!?」


短刀ちゃん達の何かを期待するように輝く瞳が八つ、長谷部に向けられた。自分から矛先が外れた事を俺が心底安心していると、泥団子4つは長谷部に差し出される。泥団子を差出されてもなにも検討がつかないらしい長谷部が顔を青くしたその時。


「柿、取ってきましたよ」



と爽やかボイスと共に剥いた柿を持った一期一振が帰還した。ニコニコと人の良い笑みを浮かべる一期一振の手の中にある柿は、“萌え”の感情を沈めるために無心で取られたのか量が多い。
そんな一期一振は、長谷部に差し出された四つの泥団子、顔を青くする長谷部を見て状況を察したのか、短刀ちゃん達に向けて微笑んだ。


「その刀装、私に下さいませんか」


刀装...?と首を傾げて数秒固まった後で、俺は思い出した。この泥団子、団子じゃなくて刀装に見立てたものだったねそういえば!
刀装である事を分かってもらえて嬉しそうな今剣の泥団子を、一期一振はソフトに握り、そして上着の内側に入れた。...!?ってマジか!!


「さすが一期一振ですね!わかってます!」
「あ、あの、一期一振さん、僕のも...」
「俺のも良かったら装備してくれよな」


小夜と愛染の泥団子も迷わず笑顔で懐にイン。一期一振の服はきっと泥で真っ黒だろうが、お前のハートは純白だよ...男だよお前...。


『...、...』



そんな中、短刀三人の後ろでなまえが俯いているのに気がつく。他の短刀ちゃん達より自分の泥団子が懐に入れるのがキツイのを再確認して渡しづらいのか、なまえは泥団子を握る手を、後ろに隠してしまった。


「なまえく、」
「なまえ! その刀装は、俺にくれないか」


そんななまえの様子に一期一振が声をかけようとするが、長谷部に遮られる。


『え、で、でも...、こんな...』
「一期一振は3つも刀装を持っている。俺は一つも持っていない。...だ、だから出陣が不安だ。」
『!』
「改めて言おう。...その刀装を、俺にくれ」


長谷部の言葉に、なまえがおずおずと泥団子を渡す。長谷部がその泥っぷりを見て口を一瞬引き攣らせたが、男気を見せて懐に入れた。ベチャッっと音がしたが.....大丈夫だろうか。


『長谷部さん...えっと、大丈夫...?』
「何の事だ」
『...! あ、あの。.....ありがとう...』


嬉しそうななまえよりもっと嬉しそうな今剣と愛染と小夜がなまえに駆け寄る。


「よかったですね、なまえ!」
「長谷部もなかなかやるな!」
「また泥団子、作ろうね...」
『...うん!』


なまえのお礼の言葉に真っ赤になって照れる長谷部。そんな長谷部を凄い顔で凝視する一期一振を見ながら、早く洗濯してあげよう...と心に誓った一日だった。先に柿食うけどね。



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ひなまる007様、リクエストありがとうございました!

粟田口のリクエストが多かった超レア短刀連載。そんな中、短刀達とリクエストしてくださったのでどうせなら粟田口派では無い短刀達メインで出そうと思ったのですが思ったより保護者達が出張ってしまいました^^;
これからも応援して頂ければ幸いです(^^)



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