07

うわ、めっちゃ美味しそう。


食堂に入った審神者の心境を一言で表すとすれば、間違いなくこの言葉だ。審神者は久しぶりの洋食に心が躍ってはいたものの、ハンバーグが大好物という訳では無い。無かった...のだが、フェルトが作ったハンバーグはどうだろう。どうやら出来てすぐ呼びに来てくれたらしく、まだホカホカと湯気が立ち上っているハンバーグは絶妙にふっくらとしていて、箸を入れたら肉汁が溢れるだろうと検討がつく。

思わず何時もの席に着席して箸を取りそうになった審神者だが、今やるべき事を思い出して、邪念を振り払うように首を横に数回降った。


「ええっと、皆。新入りが来たという事は耳に入っていると思います! しかも太刀です!」
「おお」
「漸く太刀か」
「即戦力になりそうじゃのう」
「僕達と遊んでくれるかなあ」



初めての太刀という事で食堂に居る全員に注目されるフェルト。かなり気まずい。フェルトが緊張で思わず身を固くしたその時、「じゃあフェルトくん自己紹介お願いします」と審神者が溌剌に笑った。


「フェルト、です。気軽にフェルトと呼んでくれて構わない.....、よろしく」


緊張であまり上手く口が回らなかったフェルトだが、この本丸の刀剣男士はパチパチ、と暖かく拍手の音を食堂に響かせた。ほっと一息ついて、フェルトが審神者に視線を向ける。するとまるで我が子を見るかの如く慈悲深く笑っていたので、フェルトはちょっと吃驚した。


「あ、主.....?」
「...あっ、ごめん。ちょっとうちの子達可愛いですね状態になってて...、」
「?」
「なんでもない! フェルトくんの席はそこだから、着席してもらってもいいかな?」
「ああ」


審神者が指を指した場所にフェルトが素直に着席すると「よろしくお願いします」と声が掛けられた、フェルトが声の主に視線を移すと、桃色の髪が印象的なスラリとした刀剣男士の姿が。「よろしく」とフェルトも言葉を返せば、彼は薄く笑った。


「僕は宗三左文字と申します。貴方は、フェルト、でよろしかったですかね」
「ああ...、宗三、と呼んでも?」
「構いません。しかし、フェルト、とは珍しい名前ですね。」
「そうか...? 俺からしてみれば、宗三の方が珍しいが...」


と、会話が弾んだところで、不意に審神者が「じゃあ、いただきます!」と声を張り上げた。他の刀剣男士も審神者に習い、「いただきます」と復唱する。その様子にフェルトは首を傾げた。フェルトの元いた所にはいただきます≠ニ食事前に言う文化などなかったからだ。
宗三にどういう意味か問おうとして、フェルトが宗三に声を掛けようとするが、彼はもうハンバーグを頬張っていた。今声をかけては悪いと考えたフェルトがきゅっと口を閉じたその時。

突然、宗三から花びらが舞いだした。驚いたフェルトがその花びらを凝視すると、床に落ちるまでには消えていることがわかった。それにしても不可解だと、考えたフェルトが、宗三に「それ...花びら......?」と困惑しながらも問いかけると。


「ああ...、嬉しかったり、調子がいい時、舞うんですよ」


との事。刀剣男士あるあるなのか...、と若干引きながらフェルトが食堂を見渡せば、宗三以外にも花びらが舞っている人が沢山いる。


「しかし.....、何故皆花びらが舞っているんだ...」
「...そりゃあ、今日のご飯が美味しいからじゃないですか」
「えっ!」


フェルトは思わず花びらを舞わせた。



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