03

主の「手を合わせましょ!ぱっちんこ!いただきます!」という食事前の言葉。
どうやらこの本丸では、ぱっちんこの時に手を合わせて、主の後にいただきますと繰り返し言うのが決まりらしい。なんでも、このご飯の元になった動物や野菜、それを育ててくれた人々、そしてその材料で美味しく調理してくれた人に感謝を忘れないようにこの行為をするみたいだ。

それを聞くとその行為をする事は、恥ずかしいことでは無く、誇るべきだと思えてくる。この話を聞くまでは、うわ小学生かよ恥ずかしいって正直思ってたけど。


『あ、あの。いちにい、さん…教えてくれてありがとう。』
「えっ!」


話を教えてくれた、俺の真正面に座るいちにいという人物にお礼を言うと、いちにいさんは、ほんのり顔を赤くして硬直した。何か変なところがあったかと不安に思う。

するとそんな俺に、いちにいさんの横に座っている鶴丸さんと俺の横に座っている薬研さんが驚いた顔で口を開く。


「こりゃ驚きだ、無銘刀は一期一振の事を“一兄”と呼ぶのか!」
「あー、俺っちが一兄って呼んでたから勘違いしたんだな。俺っちと一兄…一期一振は兄弟刀なのさ。」


二人の発言で、なんとなく想像がつく。

俺が薬研さんが呼んでいたからという理由で、勝手にいちにいという名前だと勘違いしていた刀剣男士の本当の名前は一期一振。いちにいっていう呼び方は、一期一振の一と兄さんを合わせた呼び方。つまり、俺が一期一振さんの兄弟でも無いのに一兄と呼ぶのはおかしい…。

確信した瞬間、カッと顔が熱くなるのを感じた。



「じゃあ俺の事は鶴兄と呼んでくれ」
「あなたは年齢的に鶴爺でしょう」
「一期一振…お前…」


俺は目の前で騒ぐ二人を放っておいて、急いでご飯を口に含む。さっきまで美味しいと感じていたが、味が感じられない程焦っていた。



「お、おい。無銘刀、そんな急いで食べると喉に詰まるぜ」



俺の心配をしてくれる薬研さんの言葉にかぶせるように、俺は『ごちそうさまでした…!』と声を発して急いで食堂を出る。



…は、恥ずかしい!


名前を間違えた事が恥ずかしい。
しかし、一期一振さんの事を兄と呼べる薬研さんのことが羨ましいなんて思ってしまう自分が一番恥ずかしかった。



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