01

誰かに呼ばれた。

そう感じた瞬間に刀だった俺の体は人間のものになっていて、驚く間もなく俺の口からは勝手に言葉が出ていた。


『…、俺は無銘刀。短刀だって甘く見てると痛い目見るよ。』


その言葉は目の前にいる顔を隠した男に自己紹介するような内容で、俺は彼に呼ばれたんだと確信した。

___彼が俺の、主様。


「無銘刀!俺はこの本丸の審神者。好きな様に呼んでくれ!あ、今更だけど無銘刀って呼んでもいい?人の姿になったばかりだけど歩けるか?この本丸を案内した方がいいよな?」
『エッ…うん…あ、はい』


興奮したようにペラペラ話す主様に素直に驚く。よく口が回る主様。コミュニケーション能力高いなあと感心する。
しかし疑問文が多い…何この人俺に答えさせる気絶対ないよ。内心そう思いつつ一応全体的に肯定しておいた。

俺の返事に嬉しそうな雰囲気で歩みを進めはじめた主様についていこうとすると、“ぐぅー”と主様のお腹から音がなる。お腹の音って、こんなに大きく鳴るんだ...。ちょっと引いた。


『…』
「…うん、そういえばもう夜だね。晩御飯の時間だ。取り敢えず今日は無銘刀の部屋だけ案内するわ、残りは明日」
『…うん…、はい』
「!…可愛いなあ!」
『う、うわ、やめてっ…くださいっ』


そう言って主様が俺の頭を撫でた。なんとなく胸がこそばゆかったので、失礼な態度をとってしまったけど、主様は気にしていないようだった。ホッと胸を撫で下ろす。


「無銘刀って敬語苦手?」


何か嬉しそうな雰囲気で俺にそうたずねてくる。顔は見えないが、絶対にニコニコと笑顔を浮かべているだろうなと何となく思う。


『まあ…』
「じゃあ敬語使わなくていいよ!可愛いし!」
『え…そんな、俺みたいな新参者が、主様に敬語なしは』
「いいからさ、主様じゃなくて主でいいし」
『…』


「なんならダーリンでも」という主様の言葉をスルーして悩む。正直苦手な敬語を使わなくていいのは、ありがたいけど。主様大好きな刀剣男士に「何主様にタメ口きいてんだオラァ」なんていちゃもんつけられてしまうかも。


『やっぱりけい、』
「え!」


敬語を使うという結論を言おうとすると主様に遮られる。大きい声に思わずびくりと肩を大袈裟に揺らせば、主が気まずそうに頭をかいた。


「あー、何かこんな事言っちゃうとずるいかもしれないけどさ…この本丸に来たからには俺と無銘刀は家族だから!敬語いらない!」
『家族…』
「そう、家族」


そう言ってまた頭を撫でられた。また胸はこそばゆかったけど、そのこそばゆさが心地いいと感じた。


『…主』
「!!」
『…これから、よろしく』
「っ勿論!!」


感極まった様子の主に抱きしめられ、この主に呼ばれてよかったと、俺は思ったのだった。



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